情報機関の権限拡大と監視縮小——専門家が警鐘を鳴らす法改正の行方
AIの全面活用や情報提供義務化も盛り込まれ、プライバシーへの懸念が高まる
オランダ政府が、国内情報機関AIVDなどの権限を大幅に拡大する法改正の検討を進めている。「明白な敵対者」をより迅速に特定できるようにすることが目的とされているが、専門家からは事前監督の縮小を中心に批判的な見方が相次いでいる。デジタル市民権団体「Bits of Freedom」のロッテ・ハウウィング氏は、「2017年の法律以降、情報機関によるデータ収集が大規模化する一方、監視は弱まってきている」と指摘する。
「時代の空気」を利用した改名と政治的駆け引き
元AIVD職員でかつて監督機関に携わったベルト・フーバート氏は、この改正の背景に「時代の空気」を読んだ政治的な意図があると見る。法案はつい先週、名称が変更され、従来の「情報・安全保障サービス法」に「国家安全保障の保護」という文言が加えられた。フーバート氏はこれを「国家安全保障の保護に反対票を投じる政党など、ほぼ存在しない」と皮肉交じりに評する。ロシア、中国、イラン、北朝鮮といった「脅威」が世論の関心を集める中、政府は2017年以前の、より緩やかな監督体制へ事実上回帰しようとしているとも述べた。緊急手続きは現行法でも存在しており、フーバート氏は「監督を減らす必要性は疑わしい」と断言する。
公的・民間機関への情報提供義務化とAI活用の拡大
今回の法改正でとりわけ注目されるのが、公的・民間機関への情報提供の義務化だ。公務員、一般従業員、システム管理者も対象となり、情報提供を拒んだ場合は刑事罰が科される可能性がある。ハウウィング氏は「自分自身がどれほどプライバシー保護に努めていても、政府機関に保存されたデータが共有されてしまえば防ぎようがない」と語る。また、AIの活用がほぼすべての業務で認められる見通しであることも大きな焦点だ。フーバート氏は「AIが誤った結論を導くリスクは、一般市民がChatGPTを使って間違いを犯すよりもはるかに深刻な影響をもたらす」と強調し、「『モハメッド』という名前が危険だとAIが学習してしまうような事態には、徹底した歯止めが必要だ」と警告する。
在蘭日本人にとって何を意味するか
法案はインターネット意見公募が始まったばかりで、市民からは「安全保障上の改正は理解できる」という声とともに、プライバシーへの懸念が多く寄せられている。オランダに在住する外国籍の日本人も、当然ながらこの法律の適用対象となる。政府機関や民間企業に保存された個人情報が情報機関に提供される可能性は、今後の生活設計を考えるうえで無視できない。フーバート氏は「この法律はこの形で通ってしまうと思う。ただ、議会がいくつかの鋭い部分を削ぎ落としてくれることを望む」と結んでいる。法案の行方は、今後の議会審議に委ねられる。
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情報源: NOS Algemeen


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