精子提供で121人の父に——法の抜け穴が生んだオランダの「マス・ドナー」問題
私的提供には法的上限なし、監督機関も手出しできない現実
オランダ北部フローニンゲン出身の43歳男性が、精子提供によって少なくとも121人の子どもをもうけていることが、オランダの時事報道番組「Nieuwsuur」の調査で明らかになった。男性は現在も活動を続けており、ドナー児支援団体や複数の母親たちが「この男を止めなければならない」と強く訴えている。
法の抜け穴が生む「無制限の提供」
オランダの認定クリニックでは、1人のドナーにつき提供できる家族数は最大12家族と定められている。しかし、ドナーと希望者が直接つながる私的な精子提供については、法的な上限が存在しない。この制度上の空白が、今回のケースを可能にした根本的な要因だ。男性はオンラインで女性に直接アプローチし、複数の精子バンクにも登録していたという。Nieuwsuurが昨年報じたところによれば、認定クリニックにおいても少なくとも85人の「マス・ドナー」が存在していたとされ、問題の根深さが浮き彫りになっている。
保健・青少年ケア監督機関(IGJ)は今回の男性について「把握していない」とし、「非常に望ましくない事案」とコメントした。しかし同機関の広報担当者は、IGJが監督できるのはクリニックで行われる医療行為に限られ、私的な精子提供は管轄外であると説明。事実上、当局が介入できない状態が続いている。
母親たちの証言と国境を越える影響
Nieuwsuurの取材に応じた複数の母親によれば、男性は自分が何人の子どもをもうけたかについて虚偽の説明をし、問い詰めると話をはぐらかしたり、将来的な連絡を断つほのめかしをしたりするという。これは、いつか子どもが生物学的な父親を知る機会を望む母親たちにとって、一種の「取引材料」として機能していた。また、自然妊娠(性交渉による受精)を示唆する性的なメッセージを送っていたとも証言されている。被害を警察に届け出ようとした母親もいたが、「警察はただ呆然としていた」と語るなど、法執行機関も有効な対処ができなかった実情が浮かぶ。
問題は国境を越えてもいる。ある母親がオンラインのDNAデータベースを通じてドイツ在住の子どもたちを特定しており、男性がデンマークの精子バンクにも登録していた事実も確認された。さらに、この男性が2019年にオランダのドナー法を評価する政府の審議委員会に参加していたことも明らかになり、どのような経緯で任命されたのかについて疑問の声が上がっている。男性自身は取材を拒否し、プライバシーの保護を求めるコメントを出すにとどまった。
オランダ社会に問われる制度の整備
オランダではこれまでにも大規模な精子提供問題が社会を揺るがしてきた。最も広く知られるのはジョナサン・マイヤー氏のケースで、世界中でおよそ550人の子どもをもうけ、2023年に裁判所から提供活動の停止命令を受けた。今回の121人という数字は、それに次ぐ規模であり、私的な精子提供に対する法整備の遅れが改めて問われている。在蘭の日本人家庭の中にも、精子提供や生殖補助医療を検討・利用する人は少なくない。クリニックを通じた正規のルートと、オンラインでの個人間提供には、法的保護の面で大きな差があることを認識しておくことが重要だ。
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情報源: DutchNews


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