イェッテン首相、WorldPrideでLGBTQ差別の世界的拡大に警鐘
同性婚合法化25周年のオランダが示す、安全への投資と現実の厳しさ
アムステルダムで開催されたWorldPride人権会議の場で、ロブ・イェッテン首相はLGBTQI+コミュニティに対する憎悪と不寛容が世界的に拡大しているとして、強い危機感を示した。「長年かけて勝ち取ってきた平等の権利が、世界各地で侵食されつつある」と述べ、同性愛嫌悪を背景とするヘイトスピーチがより公然と、そして攻撃的になっていると指摘した。その背景には「表現の自由の看板を掲げて活動する、組織的かつ資金力のある集団」が存在するとも語った。
登壇直後、親パレスチナ派のデモ参加者が壇上に向かって「あなたのレッドラインはどこにあるのか」と叫ぶ場面もあった。イェッテン首相は退場する参加者に会場全体で拍手を送るよう呼びかけながら、ガザとヨルダン川西岸の状況を「惨状だ」と表現し、抗議に正面から向き合う姿勢を見せた。
ソーシャルメディアが増幅する憎悪の連鎖
イェッテン首相が特に問題視したのが、SNSを通じた憎悪の拡散だ。大手プラットフォームがヘイトスピーチへの対策を「ほとんど講じていない」ことで、偏見を持つグループが「もはや抑制されていないと感じている」と批判した。「誤情報も偽情報も、マウスのクリック一つで瞬時に拡散する。NGOやユースワーカー、保健機関が及ぶ範囲をはるかに超えた規模で」と述べ、オンライン上の憎悪がLGBTQI+の人々にとって「最大の脅威のひとつ」だと位置づけた。
演説では、7月25日にベルリンのプライドイベントで起きたイスラム主義者による攻撃にも言及した。この事件では1人が死亡し29人が負傷した。一方で、その数日後にアムステルダムのホモモニュメント前に数千人が追悼のために集まった光景に「心が希望で満たされた」とも語り、連帯の意義を強調した。
年間750万ユーロの投資と、学校現場の現実
政府は今後3年間にわたり、クィアコミュニティの安全向上を目的として年間750万ユーロを投資する方針を示した。差別と偽情報に対抗する広報キャンペーンの実施も予定されており、資金の一部は学校教育の場における多様性推進イベント「パープルフライデー」の支援にも充てられる。2010年に始まったこの取り組みは、LGBTQN+権利団体COCのGSAネットワークが運営し、現在は全国の数千校が参加している。
ただし、この会議が開催された年は、手放しで祝えない側面もある。2024年の調査では、参加校の4分の3でポスターの破損や虹色旗への放火といった問題が発生しており、一部の学校はイベント自体を取りやめたり、「ありのままの自分で」という中立的なテーマに名称を変更したりしている。
今年はオランダが世界で初めて同性婚を法制化してから25周年という節目でもある。2001年4月1日の深夜0時を1分過ぎた瞬間、アムステルダム市庁舎で4組のカップルが婚姻届に署名した。それ以来、同国では約3万6000組の同性カップルが結婚している。先駆者として誇るべき歴史と、今なお続く差別の現実——オランダ社会はその両方を抱えながら、WorldPrideという国際的な舞台に立っている。在蘭の日本人コミュニティにとっても、この議論は無縁ではない。安全な社会の基盤は、マジョリティとマイノリティを問わず、すべての人の日常に関わる問題だからだ。
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情報源: DutchNews



