処方薬の名前を紙面に書けない――オランダ紙に相次ぐ制裁金の皮肉
IGJがNRCなど大手紙に数万ユーロの罰金。薬事法が生んだ奇妙な自主規制
オランダ医療・青少年監督局(IGJ)が、NRC、フォルクスクラント、テレヘラーフ、ADといった主要紙に対して数万ユーロの制裁金を科した。理由は、糖尿病・肥満治療薬として注目を集めるオゼンピック、ウェゴビー、マウンジャロについて「宣伝的すぎる記事」を掲載したというものだ。科学部門の記事も例外ではなく、NRCのケースでは科学編集部による報道が問題とされた。
「読んだ後に使いたくなるか」が判断の基準
IGJのスポークスパーソンはNRCに対し、こう説明している。「メディア報道を見る際には、内容・文脈・画像・音声といった全体を判断します。チェックリストではありません。記事は強く宣伝的ですか?読んだ後に、この薬を買いたい、使いたいと感じますか?」
この基準の根拠となるのが薬事法(Geneesmiddelenwet)だ。処方箋が必要な医薬品の宣伝は、媒体の種類を問わず一律に禁止されており、報道機関も例外として扱われない。IGJの解釈では、記事の形式がニュースであっても、結果として読者に特定の薬を求める気持ちを起こさせると判断されれば違反となりうる。
薬事法と「代替医療」との非対称な扱い
今回の制裁金をめぐっては、規制のバランスを疑問視する声も上がっている。著名な代替医療批判者セース・レンクンス氏は引退時、オランダの代替医療市場は年間約5億ユーロ規模に上り、その一部が健康保険から補填されていると試算した。手かざし療法、尿診断、肛門オゾン療法など科学的根拠に乏しい施術が横行しているにもかかわらず、こうした市場への規制は緩いままだ、との指摘は根強い。
実際、今回問題とされた記事の多くは、科学的に承認された処方薬を扱ったものだった。承認薬について事実に基づいて報じることが制裁の対象となる一方で、代替医療の宣伝は比較的自由に流通している現状は、規制の矛盾として国内で議論を呼んでいる。
在蘭日本人にとっての意味
今回の一連の制裁は、オランダで医療情報を入手しようとする際の注意点を改めて浮き彫りにする。新聞やオンラインメディアで処方薬に関する詳細な情報を見つけにくいと感じたとしても、それは報道機関が意図的に情報を隠しているのではなく、法律上の制約によるものかもしれない。処方薬に関する正確な情報は、かかりつけ医(huisarts)や薬剤師(apotheker)に直接相談するのが引き続き最善の手段だ。
なお、今回の騒動のきっかけとなったNRCのコラムには一つの「おちゃめ」な仕掛けがある。筆者は自身が処方されたかゆみ止めクリームが劇的に効いたと書きながら、薬名を法律上の理由で明かせないとし、代わりにパズルを出題した。「クリーム(crème)という単語の前に21文字の名称が付く。その文字からは少なくとも7つの女性名が作れ、うちひとつはマリア(Maria)」。IGJの基準に従い、筆者は読者からの「解答」もきっぱり拒絶すると宣言している――これもまた、規制のあり方への静かな問いかけといえるだろう。
広告掲載にご興味のある方は こちら
情報源: NRC



/https://content.production.cdn.art19.com/images/2e/d0/18/ab/2ed018ab-e157-4212-9f27-910ee353f0e1/91502b4bd0fde49ef44f4d5a3d8bc772ebc052dc6a2a3fea3f1473035e78fa243366aaf45d3376d959c28075262335c58da6cf79c1cf6890be2ee46354818675.jpeg)