絶滅寸前から2000組へ――コウノトリがオランダで劇的復活を遂げた
かつて姿を消しかけた「幸運の使者」が、いま各地で雛を育てている
オランダの空に、あの大きな白い翼が戻ってきた。赤いくちばしと長い脚が特徴的なコウノトリ(オランダ語でooievaar)は、かつて「幸運の使者」として各地で愛されてきた鳥だ。しかし20世紀半ば、その姿はオランダからほぼ消えかけていた。いまその同じ鳥が、国内各地の屋根や電柱の上で雛を育てている。
一度は消えかけた「幸運の使者」
1960年代、コウノトリはオランダ国内でほぼ絶滅寸前の状態にあった。農薬の大量使用による餌場の喪失、湿地帯の干拓、繁殖地の減少など、複合的な要因が個体数を急激に押し下げた。ヨーロッパ全土でも同様の傾向が見られ、かつて農村の象徴だったこの鳥の巣は、各地から次々と姿を消していった。
その後、環境保護への意識が高まるなかで、生息環境の回復と積極的な保護活動が各地で始まった。湿地の再生、農薬規制の強化、人工巣台の設置といった取り組みが長年にわたって積み重なった結果、個体数は着実に増加に転じた。
繁殖ペアは今や約2000組
現在、オランダ国内に生息するコウノトリの繁殖ペアは約2000組にまで達しているとされる。数十年前の絶滅危機からすれば、まさに劇的な回復ぶりだ。近年は都市近郊でも目撃例が増えており、以前はほとんど見られなかった地域でも営巣が確認されるようになってきた。
ちょうど今の季節は、新たな雛が誕生し巣の中でひな鳥が育つタイミングだ。背の高い木のてっぺんや建物の屋上などに組まれた大きな巣を双眼鏡で観察すると、親鳥が餌を運ぶ姿や雛が首を伸ばす光景に出会えることもある。野鳥観察に詳しい地元の自然団体も、この時期のフィールドウォークを勧めている。
オランダに暮らす私たちにとっても身近な存在
コウノトリはオランダ文化において特別な意味をもつ鳥だ。赤ちゃんを運んでくるという言い伝えは日本でも広く知られているが、その伝説の発祥はまさにヨーロッパであり、オランダでも出産や幸運の象徴として根強く親しまれてきた。家の前にコウノトリのオブジェを飾る習慣が今も残っているのは、そうした文化的背景があるからだ。
在蘭の方であれば、郊外をドライブしたり公園を散歩したりする際に、コウノトリの巣を探してみるのもいい。今がまさに雛の観察に最適な季節であり、この回復の物語を自分の目で確かめる絶好の機会といえる。絶滅寸前からの復活を遂げたこの鳥の姿は、自然保護の取り組みが長い時間をかけて実を結ぶことを、静かに示している。
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