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AIが生む「疑いの毒」――技術は静かに人間を変えていく
テクノロジー 読了 2分

AIが生む「疑いの毒」――技術は静かに人間を変えていく

生成AIの台頭が招く慢性的不信感と、失われつつある「好奇心の旅路」

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ある神経科学者がLinkedInに誇らしげな投稿をした。「私の記事、ニューヨーク・タイムズに掲載されました!」――そのはしゃいだ文面と絵文字が、逆に筆者の目を引いた。ロンドン・キングスカレッジの研究者Anne-Laure Le Cunffによるその記事の見出しは、「AIは即座に答えを出す。それが私たちを愚かにする」というものだった。NRCのコラムニストはその記事を読み始めながら、ふと自分の変化に気づく。「疑ってかからなかった」という、ほんの小さな安堵感に。

友人の旅行写真にも忍び込む疑念

生成AIが普及して以来、記事を読むときも画像を見るときも、「これは本物か?」という問いがつきまとうようになった、とコラムニストは書く。著者は実在するのか。この写真はAIで加工されていないか。そうした疑念はもはや「健全な懐疑心」の域を超え、慢性的な不信感――“sluipend gif”(忍び寄る毒)――へと変質しつつあるという。

Metaが今週発表したAI画像生成ツール「Muse Image」は、FacebookとInstagramに統合される予定だ。Metaはこれを「あなたの世界を知る創造的パートナー」と宣伝し、平凡なセルフィーを劇的な夕焼け風景に変えるデモを披露した。Photoshop以来、画像加工は珍しいことではない。しかし、SNS上のあらゆる写真がAIで整えられうる環境になれば、友人から届いた旅先の一枚にさえ「実際はどうだったのか?」と思わずにはいられなくなる、とコラムニストは指摘する。コンテンツへの不信は、やがて人への不信へとつながりかねない。

「問いと答えの間」が消えていく

Le Cunffの論考が問うのは、AIが「嘘をつく」ことではない。AIが「速すぎる」ことだ。GoogleのAI概要機能(AI Overview)は、検索結果の上部に即時回答を表示する。その結果、アメリカの検索の60%でリンクがクリックされなくなったという。ユーザーはAIの要約で満足し、個々のウェブサイトへ「旅」することをしなくなった。

Le Cunffが強調するのは、まさにその「旅」の価値だ。かつての検索体験では、一つのリンクから別のリンクへとたどり着き、想定外の視点や情報に出会うことがあった。脳科学の知見によれば、そうした「回り道」で得た知識ほど記憶に深く刻まれる。「技術は、問いと答えの間にある空間を”排除すべき空白”として扱っている。しかし私たちが何かを学ぶのは、まさにその空間においてだ」とLe Cunffは書く。

オランダ在住者にとっての問い

AIの即時回答が持つ誘惑は抗いがたい。時間は節約できる。答えは確かに返ってくる。コラムニスト自身も「それでもやはり、AIの答えに流されてしまう」と率直に認める。しかし問題はその積み重ねだ。疑念を持ちながらコンテンツを消費し、好奇心の回り道を省略し続けたとき、私たちはどのような読者に、どのような人間になるのか。

オランダでもAI検索の浸透は進んでおり、こうした問いは遠い話ではない。技術の利便性を享受しながらも、「問いと答えの間の空白」を意識的に守ることが、これからの情報リテラシーの核心になるかもしれない。Le Cunffの記事は学術論文でも警告文書でもなく、一人の研究者の誠実な問いかけだ。そしてコラムニストはこう締めくくる――だからこそ、珍しくも疑わずに最後まで読めた、と。

情報源: NRC

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