政府の謝罪は意味があるのか――手当不正問題が問いかけるもの
名誉教授が新著で主張「謝罪には実際の効力がある」
オランダでは近年、行政による重大な失態が立て続けに明らかになっている。児童手当の不正徴収問題(toeslagenaffaire)、フローニンゲン州でのガス採掘による地盤沈下と住宅被害、そして青少年福祉(jeugdzorg)の機能不全――。それぞれの問題で多くの市民が深刻な被害を受け、政府はそのたびに公式の謝罪を表明してきた。しかし、「謝罪は言葉だけで済まそうとする安易な対応ではないか」という批判の声は、社会の中で根強く残っている。
「謝罪には効果がある」――研究者が反論
こうした批判に真正面から向き合ったのが、犯罪学を専門とするヨス・デ・カイゼル名誉教授だ。同氏は最新著書の中で、謝罪が被害者の心理的回復や社会的な修復に対して実質的な効力を持つと主張する。謝罪を「免罪符」として矮小化する見方を否定し、適切に行われた謝罪は被害者に対して「自分の苦しみが認められた」という感覚をもたらし、それが前向きな変化の出発点になりうると説く。これは感情論ではなく、研究の積み重ねに基づいた見解だという。
被害者にも求められること
ただし、デ・カイゼル氏の主張は「謝罪さえすれば十分」というものではない。同氏は同時に、被害者自身も自らの人生を立て直す努力が必要だと指摘している。この点は、謝罪を受ける側への一定の要求として受け取られかねず、議論を呼ぶ可能性もある。しかし同氏の意図は、謝罪という行為を出発点として、加害者側と被害者側が共に関係を修復していく双方向のプロセスを重視することにある。
在蘭日本人にとっての視点
児童手当不正問題は、オランダ在住の外国人家庭にも深刻な影響を及ぼした事案だ。数万人に及ぶ被害者が長年にわたって苦しんだとされるこの問題は、行政への不信感を社会全体に広げた。政府の謝罪がその信頼をどこまで回復できるか、そしてそれが制度的な改善や補償の実現と結びついて初めて意味を持つという現実は、オランダで生活するすべての人が意識しておくべき点といえる。謝罪の言葉と実際の変化の間にある距離を問い続けることが、市民社会の健全さを保つ上で欠かせない。
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