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グローニンゲン発スタートアップ、リチウム採掘の「水の無駄」に挑む
テクノロジー 読了 3分

グローニンゲン発スタートアップ、リチウム採掘の「水の無駄」に挑む

廃水からナトリウムを除去する膜・電極技術で、水使用量をほぼ半減へ

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チリの砂漠地帯では、極端に乾燥した日にはディーゼルトラックがリチウム精製所へ清潔な水を運ぶ光景が見られる。電気自動車の普及を支えるために採掘されるリチウムが、その精製のために大量の水を消費している——グローニンゲンのスタートアップ「Ioniqs」の共同創業者で代表のヤスパー・ザウデルファールト氏は、この矛盾を「狂気の沙汰だ」と表現する。同社は廃水を浄化して再利用可能にする独自技術を開発し、業界が抱える構造的な問題に挑んでいる。

リチウム1トンに5万リットルの水

リチウムは希少金属ではないものの、採掘・精製に手間とコストがかかる「重要鉱物」に分類される。電池に使われるリチウム炭酸塩を1トン生産するのに必要な淡水は約5万リットルで、これはオランダで1人が1年間に家庭で使う水の量とほぼ同じだ。電気自動車用バッテリー20〜30台分に相当するリチウムを得るために、それだけの水が乾燥地帯で消費される。さらに今後5年間でリチウムの需要は倍増すると見込まれており、産地の水資源への圧力は一段と増す見通しだ。

精製プロセスでは、塩水湖などから採取したかん水に炭酸ナトリウム(ソーダ)を加えてリチウム炭酸塩を沈殿させる手法が一般的だ。しかしこの工程でリチウム濃度が下がりナトリウム濃度が上がるにつれ、水は使い物にならなくなり、最終的には廃水として環境に放出される。電池に使うリチウムには純度99.5%以上が求められるため、ナトリウムの混入は品質と安全性の両面で致命的となる。

「ナトリウムを除く」発想の転換

Ioniqsが開発した技術の核心は、「リチウムを取り出す」のではなく「ナトリウムを除く」という発想にある。技術ディレクターのアンソニー・キュリル・アルールラジャン氏(2022年ワーヘニンゲン大学で博士号取得)によれば、前処理後の廃水中のイオンの組成はリチウムが92%以上、ナトリウムが8%以下。少数派のナトリウムだけを狙い撃ちにすることで、エネルギー効率を大幅に改善できる。

具体的には、廃水をまず特定の粒子だけを通す高性能膜でろ過し、続いて微細な籠型電極で電荷と形状の違いによってナトリウムイオンとリチウムイオンを分離する。除去しきれなかったナトリウムを取り除いた廃水は再び使用可能な水として循環させる仕組みだ。この技術によってリチウムの回収量が7〜8%向上し、水使用量をほぼ半減できるとしている。また電力で動作するため、太陽光や風力などの再生可能エネルギーとの組み合わせも可能だという。

最終製品はコンテナ型のプラグアンドプレイ式装置として販売を計画している。廃水を管で流し込むだけで既存の精製フローに組み込めるため、現場側の設備変更は最小限で済む。収益モデルとして、技術導入によって生まれた追加リチウム回収分の価値の少なくとも15%を顧客から受け取る形を想定している。

有望だが、実証はこれから

TUデルフトで循環性と重要鉱物を専門とする産業デザイナーのベンヤミン・スプレヒャー氏は「ビジネスケースとしては有望」と評価する一方、慎重な見方も示す。「膜技術は実験室では優れた成果を出しても、現場では実廃水の成分が変動しやすく期待どおりの結果が出ないことが多い。この技術が例外かどうかは、実地テストをしなければわからない」という。フィールドテストはまさにIoniqsが次のステップとして取り組もうとしている課題だ。

リチウム採掘の水問題には世界各地でさまざまなアプローチが試みられている。電気透析を使って電圧と膜でリチウム自体を抽出する研究や、塩水混合物を乾燥させてから溶媒でリチウムを単離するオーストラリア発の手法なども報告されている。また、ロッテルダムの回収専門会社SK Tesのように、電気自動車の廃バッテリーからリチウムを再生するリサイクルの取り組みも進んでいる。需要の急増に対応しながら環境負荷を抑えるには、こうした複数のアプローチを組み合わせることが現実的な解となりそうだ。在蘭日本人にとっても、日常的に使うEVや電子機器のバッテリーがどのようなコストのもとで作られているかを知る上で、この問題は決して遠い話ではない。

情報源: NRC

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