値下げ20万ユーロでも売れない…オランダの「売却難」住宅の実態
過熱する購入市場の陰で、条件次第では売れ残る家も
カペレ・アーン・デン・アイセルに暮らすヨリ・ファン・デル・ハウトさんとベリンダ・バッカーさんは、定年退職後の生活に備えてスペインに新居を購入した。計画の前提は明快だった――オランダの自宅はすぐに売れるはずだった。しかし現実は、その楽観的な見通しを大きく裏切ることになる。
20万ユーロ下げても動かない市場
オランダの住宅市場は近年、慢性的な供給不足と購入希望者の激しい競争によって、売り手有利の状態が続いてきた。「出せばすぐ売れる」という感覚は多くの売主に共有されており、ヨリさん夫妻もその空気の中で判断を下した。ところが自宅への引き合いは期待を下回り、夫妻はすでに販売価格を20万ユーロ(約2,000万円)引き下げた。それでも買い手はついていない。
値下げ幅の大きさは、物件の立地や状態、間取りといった個別条件が市場の熱気を必ずしも反映しないことを示している。人気エリアの小型物件には複数の入札が殺到する一方、郊外の大型物件や築年数の古い住宅は、希望価格での売却が難しいケースも少なくない。
二重生活費という現実のコスト
問題は価格だけではない。スペインの新居の住宅ローンや維持費と、売れ残ったオランダの自宅にかかるコストが同時進行で発生している。二重の住宅費負担は家計を圧迫し続けており、「退職後の生活設計」というそもそもの目的にも影を落としている。当初描いていたタイムラインは大幅にずれ込み、夫妻は先の見えない状況に置かれたままだ。
専門家らはかねてより、購入市場の過熱と売却の難しさは必ずしも比例しないと指摘してきた。需要が高い地域・タイプの物件は即日売却も珍しくないが、そこから外れると長期間市場に滞留するリスクがある。ヨリさん夫妻のケースは、その分断を象徴する事例といえる。
在蘭日本人にとっての教訓
オランダに居住し、将来の帰国や第三国への移住を視野に入れている日本人にとっても、このケースは示唆に富む。「買い手市場か売り手市場か」という単純な二項対立ではなく、自分の物件が「売れやすい条件」を満たしているかどうかを事前に精査することが不可欠だ。不動産エージェントによる客観的な査定、売却にかかる現実的なタイムライン、そして万一売れ残った場合の資金計画――これらを住み替えや移住の前に十分に検討しておく必要があることを、ヨリさん夫妻の経験は改めて示している。
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