精神的DVを独立した犯罪に オランダ内閣が歴史的な法案を提出
「支配的コントロール」を初めて刑法に明記、フェミサイド対策が加速
オランダ内閣は6月、パートナーへの精神的虐待や「支配的コントロール(coercive control)」を独立した犯罪として刑法に明記する法案を提出した。法務大臣ダフィット・ファン・ウェール氏が主導するこの法案は、家庭内暴力が致命的な事態に発展する前に警察や検察が介入できる法的根拠を初めて設けるものとして注目されている。
「心理的暴力は今も常に犯罪ではない」
現行のオランダ刑法は、身体的暴力を主な規制対象としており、精神的虐待を直接取り締まる規定は存在しない。ファン・ウェール大臣は声明の中で、「心理的暴力は被害者に深刻な影響をもたらすが、現時点では常に犯罪として扱われるわけではない。そのため、深刻または悪化している状況であっても、警察や司法が十分な対応をとれないケースがある」と問題を指摘した。
法案では、支配的コントロールを「パートナーを支配する目的で、継続的に相手を侮辱し、恐怖に陥れ、または孤立させる行為のパターン」と定義し、刑法典に明文化する。イギリスは2015年、アイルランドは2019年にそれぞれ支配的コントロールを犯罪化しており、オランダはこれらの先例に続く形となる。
量刑の強化と訴追手続きの見直し
法案にはさらに、量刑に関する重要な改正が盛り込まれている。家庭内暴力や支配的コントロールのパターンが認められる傷害致死事件に対して、殺人と同等の終身刑または30年の刑を裁判官が適用できるようにする条項がその一つだ。現行法では「故意(計画性)」の立証が困難な場合に殺人罪が適用できず、量刑が軽くなるケースが課題とされていた。
また、ストーキングや支配的コントロールについては、被害者の正式な告訴がなくても検察が訴追を開始できる制度へと改める。被害者が加害者を恐れて告訴に踏み切れない実態を踏まえた措置だ。性的画像をばらまくと脅す「セクストーション」についても、独立した犯罪として規定される。
フェミサイド問題が立法の背景に
この法案の背景には、フェミサイド(性別を理由とした女性の殺害)をめぐる長年の社会的圧力がある。オランダでは年間約43人の女性がフェミサイドの犠牲となっており、これは8日に1人というペースに相当する。昨夏にはロッテルダムで1,000人規模の抗議行進が行われ、検察当局も「支配的行為や首絞めは殺害に至る前の重大な危険信号だが、見逃されてきた」と警鐘を鳴らしていた。
在蘭日本人にとっても、パートナー間のトラブルが生じた際の法的保護の枠組みが変わりうる話題だ。法案は現在、10週間のパブリックコンサルテーションを経て議会審議に進む予定であり、正式な法制化にはなお時間を要するが、オランダにおける家庭内暴力対策の大きな転換点として受け止められている。
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情報源: DutchNews
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