RIVMが警告:新型ウイルス・猛暑・偽情報が重なる「複合危機」にオランダは備え不十分
薬剤耐性菌・気候変動・国際協力の弱体化——10年以内のポリクライシスを「現実的リスク」と指摘
オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)は6月30日、国内の公衆衛生を脅かす世界的リスクをまとめた最新報告書を発表した。保健省の委託を受けてまとめられたこの報告書は、薬剤耐性菌の拡大、気候変動、偽情報の蔓延、そして国際的な感染症対策の枠組みの弱体化という四つを最大の脅威として挙げる。さらに、これらが単独ではなく同時に発生し互いを増幅させる「ポリクライシス(複合危機)」が、今後10年以内に起こる「現実的な」可能性があると明確に警告している。
四つの脅威が折り重なるとき
報告書が最も深刻と位置づけるのは、薬剤耐性菌の世界的な拡大だ。抗生物質をはじめとする薬剤が効かない病原体が増えることで、従来なら治療できた感染症が命取りになりかねない。次いで気候変動が挙げられる。RIVM研究者のヘンク・ヒルデリンクは「6月にすでに超高温熱波が起きており、超過死亡の可能性もある。こうした気象極端化はもはや遠い未来の話ではない」と語る。加えて、ヒトと動物の密接な接触や国際的な人の往来の増加により、新たな感染症が「パンデミック規模に発展する」リスクも引き続き高いとする。
2019年の前回調査では挙げられていなかった新たな脅威として、報告書は偽情報・誤情報の拡散と、国際協力の崩壊の二点を加えた。特に注目されるのがWHOをめぐる動向だ。米国がWHOから撤退したことで、ウイルスの封じ込めが遅れ、効果が薄れるリスクが高まっているとRIVMは指摘する。先月コンゴで急速に広がったエボラ出血熱についても、専門家の間ではWHOの機能低下とUSAIDによる米国の援助削減が一因とみられている。ヒルデリンクは「良好な国際協力は、開かれた経済を持つオランダにとって健康リスクの軽減にも直結する」と強調する。偽情報の拡散についても、ワクチン接種への忌避感を高め、感染症対策の効力を削ぐ要因として問題視している。
事後対処型のままでよいのか
報告書が政府に対して向ける批判も鋭い。RIVMは、各省庁が自分の所管テーマに閉じこもりがちな「縦割り構造」が複合危機への対応を妨げていると指摘する。例えば、薬剤耐性菌は紛争地帯で生まれやすく、そこから難民やオランダ軍兵士を介して国内に持ち込まれうる。つまり国防省と保健省が連携すべき問題だが、「官僚たちは重要性を頭では理解していても、実際の連携は遅れている」とヒルデリンクは言う。オランダ政府が「リスクが現実になってから動く」という事後対処型の姿勢から抜け出せていないことを、報告書は繰り返し問題視している。
2019年の前回報告書もパンデミック発生の大きなリスクを警告していた。その直後にCOVID-19が中国で発生したことは記憶に新しい。「あの警告は多くの機関が何度も発していた。それでも私たちは十分に備えられていなかった」とヒルデリンクは振り返る。今回の報告書がどこまで政策に反映されるかは未知数だが、在蘭日本人を含む生活者にとっても、感染症対策の充実やワクチン接種体制の維持は切実な問題だ。縦割りを超えた政府の行動が、次の危機の深刻さを左右する。
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情報源: NRC
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