精神的DV・支配的行為を刑事罰化へ――オランダ内閣が法案を発表
フェミサイド防止を念頭に、検察の独自訴追も可能に
オランダ内閣は、精神的虐待(psychische mishandeling)と支配的コントロール(dwingende controle)を法律に明文化し、刑事罰の対象とする法案を発表した。現行法ではこれらの行為が必ずしも違法とならず、警察や検察が深刻なケースでも介入できない状況が続いていた。今回の法案はその空白を埋め、家庭内暴力の深刻化を早期に食い止めることを目的としている。
「現状は重大な場面でも手を打てない」
法務・安全保障大臣のファン・ウェール氏は、「精神的暴力は被害者に大きな打撃を与えるにもかかわらず、現時点では必ずしも犯罪として扱われない。そのため、警察や司法は深刻な状況や事態がエスカレートしている場面でも十分に動けない」と問題の核心を説明する。被害者が告訴に踏み切るハードルが高いことも課題で、告訴がなければ現行制度では法的な手段がほぼ講じられなかった。新法案では、検察が独自の判断でストーキング・精神的虐待・支配的コントロールの容疑者を逮捕・訴追できるようになり、被害者の申し出に頼らない積極的な介入が可能になる。
この法案は前政権期から準備が進められてきた。当時の国務長官コーンラディエ氏がフェミサイド(女性を標的にした殺害)の防止策として下院に約束したものであり、専門家の間では精神的暴力が身体的暴力やフェミサイドへの前段階にあたると広く認識されている。
殺人と同等の重罰、セクストーションも対象に
もう一つの焦点は量刑の見直しだ。フェミサイドの裁判では、計画性(voorbedachte rade)の立証が難しいため、殺人罪ではなく刑罰の軽い傷害致死罪で有罪となるケースが少なくなかった。新法案では、致死的な犯罪に先立って支配的コントロールや精神的虐待が認められた場合、裁判官がより重い刑を科せるよう改める。最大で終身刑または30年という、殺人罪と同等の量刑を適用できるようになる。
さらに、いわゆるセクストーション――性的な写真や動画を用いた脅迫――についても改正が盛り込まれた。現行では実際に相手を何らかの行為に強制した場合のみ訴追できるが、新法案では脅迫の段階だけで訴追が可能となる。デジタル空間での被害が増加するなか、実害が生じる前に介入できる枠組みが整う。
パブリックコメントを経て議会へ
現在、法案に対するパブリックコメントが広く受け付けられている。その結果を踏まえて内閣が最終案を調整したのち、上院・下院に送付され、議会での審議と採決が行われる。成立の見通しはまだ定まっていないが、在オランダの日本人にとっても無関係ではない。DV被害の通報や保護を求める際の法的根拠が広がることで、外国人被害者が警察や支援機関に相談しやすくなる可能性がある。精神的虐待や支配的行為が明文化されれば、被害の実態を言語化しやすくなり、支援へのアクセス改善にもつながり得る。法案の行方は引き続き注目される。
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情報源: NOS Algemeen
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