「強いEUは拡大でなく自制から」――エッセイ賞受賞作が問う新世界秩序
政治学生マルワ・ブアッザティがNRCマルク・シャバンヌ賞2026を受賞
アメリカの影響力が後退し、国際秩序が揺らぐ今、ヨーロッパはどこへ向かうべきか――。その問いに真正面から向き合ったエッセイが、オランダの高級紙NRCが主催する権威あるコンテストで最高賞に輝いた。受賞したのは政治学専攻の学生、マルワ・ブアッザティ。彼女の論考は、拡大路線を歩み続けるEUへの根本的な問い直しとして注目を集めている。
「自制」こそが真の強さ
今年のマルク・シャバンヌ賞のテーマは「Vaarwel Amerika, welkom Europa(アメリカよさらば、ようこそヨーロッパ)――新世界秩序においてEUはいかに繁栄できるか」。応募資格は35歳以下に限られており、次世代の書き手がヨーロッパの未来を構想する場として設けられたコンテストだ。数ある応募作の中からブアッザティの作品が選ばれた決め手は、その逆説的な主張にある。
彼女は、EUが真に繁栄するためには「際限のない強化や拡大」に頼るべきではないと論じる。むしろ求められるのは「自己抑制と境界の設定(begrenzing)」だという。過去の歴史的な失敗を繰り返さないためにも、EUは自らの限界を冷静に見極め、できることとできないことを峻別する姿勢こそが長期的な安定につながる、というのが彼女の立場だ。
ポッドキャストで本人が朗読
受賞作はNRCの人気シリーズ「日曜のリスナー向け読み聞かせ(Luisterverhaal op zondag)」の一環として配信され、ブアッザティ本人の朗読で聴くことができる。プレゼンターのブラム・エンデダイクが番組を進行し、編集にはヤン・パウル・デ・ボント、レダクションはロヒール・ファン・ト・ヘックが担当した。音声コンテンツとして届けることで、活字を超えた説得力と臨場感を持つ作品に仕上がっている。
在蘭日本人にとっての視点
ブアッザティのエッセイが提起する「拡大か、自制か」という問いは、EUの行方を日常的に肌で感じるオランダ在住者にとっても他人事ではない。エネルギー政策、移民問題、NATO分担金をめぐる議論など、EU内部の亀裂は生活に直結する政策判断にも影響を及ぼしている。若い世代の書き手が「強さとは膨張ではない」と喝破する視点は、変動する国際秩序の中でEUの役割を再定義しようとする現在の政治議論と深く共鳴する。受賞作はNRCのポッドキャストプラットフォームで無料配信されており、オランダ語を学ぶ読者にとっても良質なリスニング教材となるだろう。
広告掲載にご興味のある方は こちら
情報源: NRC
関連ニュース

窒素削減計画、深夜論戦を経ても内閣が方針を堅持――農家は議事堂前でトラクター抗議
オランダ政府、英軍向けウラン濃縮をUrencoに承認 防衛協力の新局面

ケティコティ、窒素政策審議、そしてコーマン監督の辞任――7月1日のオランダ

ボックス3課税法案、上院の採決を夏以降に延期——秋の予算発表が焦点に
保育施設スタッフの半数を学生で賄う特例措置、懸念の声を押し切り2年延長
保育施設スタッフの半数を学生で賄う特例措置、懸念の声を押し切り2年延長
