コロナ議会調査:早期介入を訴えた疫学者と、根拠なき薬を推奨した医師が証言台へ
オランダ議会の特別委員会、コロナ対応めぐる「両極」の専門家を尋問
オランダ議会のコロナ禍調査特別委員会は6月17日、感染症の専門家アムリッシュ・バイジョー氏と家庭医ロブ・エレンス氏を相次いで証人として尋問した。集中治療専門医ディーデリク・ホメルス氏やRIVMのモデル研究者ヤッコ・ワリンハ氏に続く証人尋問で、コロナ禍における専門家の役割と責任が改めて問われた形だ。二人の証言は、パンデミック対応をめぐるオランダ社会の分断を象徴するかのように対照的だった。
「いつも遅すぎた」——Red Teamの批判的疫学者
バイジョー氏は国境なき医師団や赤十字で紛争地での感染症対策に携わってきたフィールド疫学者で、コロナ禍では「Red Team Covid 19 NL」の共同創設者として活動した。同グループは政府に求められることなく助言と批判を発信し続けた専門家集団だ。
バイジョー氏が一貫して訴えたのは、早期介入の重要性だった。「政府は私たちの言葉に耳を傾けているようなふりをし、用語の一部さえ取り入れた。しかし実際には全く別のことをしていた」と彼は証言した。Red Teamが繰り返し指摘したのは、オランダは強硬な措置を取るたびに対応が遅すぎたという点だ。マスク着用をめぐる政策の迷走も批判の的となった。「まず大規模な研究が必要だと言われた。その間もウイルスの拡大は続いているのに」とバイジョー氏は述べ、不確実性の中でも迅速に判断を下す能力の欠如を問題視した。また、首相マルク・ルッテ氏らによるコロナ記者会見についても、「多くの人が視聴するかもしれないが、視聴しない人はさらに多い」と指摘し、情報が届きにくい層へのコミュニケーション強化を求めた。Red Teamは2022年に自主解散している。
「奇跡の薬」を信じた医師の迷走
一方、北リンブルフ州マイエル村の家庭医エレンス氏の歩みは、より複雑な様相を呈する。パンデミック初期の2020年5月、彼はテレビのトーク番組「Op1」に出演し、感染対策の基本的な指針にも「なじめない」と発言。ウイルス学者アブ・オスターハウス氏と公開の場で意見が対立した。
エレンス氏が「コロナへの特効薬」として推奨したのが、抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンだ。当時のアメリカ大統領ドナルド・トランプ氏も「奇跡の薬」と持ち上げていたこの薬について、エレンス氏はSNSや「オルタナティブメディア」を通じて積極的に宣伝した。データ分析によれば、彼のTwitter投稿は約2,500回引用された。しかし複数の研究がこの薬のコロナへの効果を否定しており、医療監督機関(IGJ)は副作用への懸念と科学的根拠の欠如を理由に、エレンス氏に処方を禁止した。さらに、この薬を支持した論文は2024年に方法論の欠陥と倫理上の問題を理由に撤回されている。エレンス氏はまた、患者に対してヒドロキシクロロキンの処方を自分の担当医に求めるよう促す書簡を作成・配布し、全国の家庭医から強い反発を受けた。陰謀論の温床となっていたとされるオルタナティブメディア「カフェ・ヴェルトシュメルツ」に出演し、「政府は人々を治療させたくない。全員にワクチンを打たせたいのだ」とも発言している。
在蘭日本人にとっての意味
今回の証人尋問は、コロナ禍における専門家の情報発信と政府の意思決定プロセスを検証するオランダ議会の大規模調査の一環だ。誤った医療情報がSNSを通じて急速に拡散し、公衆衛生に影響を及ぼしたプロセスは、オランダ国内に限らず普遍的な問題として注目される。在蘭日本人を含む外国人居住者にとっても、コロナ禍に自分が接した情報の信頼性を改めて考えるきっかけとなるだろう。議会調査はまだ続いており、政府やRIVMの判断に対するさらなる検証が予定されている。
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情報源: NRC
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