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密室の「牛取引」が揺るがす、オランダ少数連立の政治信頼
政治・行政 読了 3分

密室の「牛取引」が揺るがす、オランダ少数連立の政治信頼

開発援助とテロ礼賛規制が交換条件に――議会に走った衝撃

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オランダ政界を揺るがす密室取引が、また一つ明るみに出た。D66・VVD・CDAによる少数連立政権のもと、開発援助という外交・人道の問題と、テロ礼賛の刑事罰化という国内治安・表現の自由の問題が、水面下で「交換条件」として結びつけられていたことが判明したのだ。

3億8000万ユーロを巡る密約

事の発端は上院での予算審議だった。D66のスヨーズマ外務・開発協力相は、省の予算案を上院で通過させるため、ジェシー・クラーファー率いるPROの支持が不可欠だった。PROが要求したのは開発援助予算の3億8000万ユーロの増額。スヨーズマはこれを受け入れた。省の予算が上院で否決されるような事態は、一世紀以上前にさかのぼらなければ前例がないとされる。

問題は、その翌日に別メディアのトラウ紙が報じた「内部の取引」だった。D66はこの合意の代償として、連立協議での取り決めに反する形で、VVDのファン・ウィール法相が今議会期中にテロ礼賛を刑事罰化する法案を提出することを黙認したというのだ。この法案は他国では表現の自由や集会・デモの自由を制限する結果をもたらしてきた経緯があり、D66が党の基本原則として強く反対してきた分野にほかならない。取引の存在を知らされていなかったPROは強く反発し、議会内でも波紋が広がった。

「牛取引」とは何か、なぜ問題なのか

オランダ語で「koehandel(牛取引)」と呼ばれるこの種の政治的取引は、関連性のない政策分野を組み合わせて利益を交換するものだ。NRCの解説は、こうした手法が通常の妥協型政治とは本質的に異なると指摘する。通常の妥協は社会全体の利益を追求するものだが、牛取引はあくまで当事者間の「損得」を軸に動く。政策分野が無関係なまま結びつくため、有権者には何が起きているのか理解しにくく、政党の信頼性を内側から空洞化させると批判される。

こうした取引はこの政権に限った話ではない。前のスホーフ内閣でも、教育費の大幅削減が上院を通過できない危機に際し、CDA・JA21・SGPが支持に回った見返りとして、教師給与カットの回避や宗教教育の存続、記念的教会への追加投資などが「合意」されていた。SGP党首のクリス・ストッフェルがこの中身を自党支持者に明かしたことで、その実態が広く知られることになった。

秋の予算審議へ、高まる懸念

今回のスキャンダルが示すのは、少数政権という構造的制約のもとで、連立内部でさえもはや一枚岩で行動できなくなっているという現実だ。VVDは右寄りの政策パートナーとの取引を好み、D66とCDAは社会保障や開発援助では左寄りの立場に近い。PRO支持を得るためにD66が動けば、VVDはその「代償」を内部で要求する構図が生まれる。

問題は今後さらに深刻になりうる。秋の予算審議では、社会保障費65億ユーロの削減案が最大の焦点となる見通しだ。左派政党や労使からの圧力でこの削減が一部修正を余儀なくされた場合、VVDが連立内部で要求できる「交換条件」の規模は一段と膨らむ。NRCは「連立内の未払いの請求書が増えるほど、政権は不安定になる」と述べており、ジェッテン首相が先週、削減案の見直しに含みを持たせた発言をしたことで、この懸念はいっそう現実味を帯びている。

在蘭日本人にとって直接的な影響が見えにくいテーマかもしれないが、政府の政策決定が密室取引に左右される状況は、税制・社会保障・外国人政策など生活に直結する分野にも波及しうる。オランダの連立政治の「内側」を理解しておくことは、この国で暮らすうえでますます重要になっている。

情報源: NRC

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