「私たちのアムステルダム」は外国人・スタートアップを置き去りにするのか
新中道左派連立の70ページ合意、テック振興と国際居住者支援に空白
アムステルダムに新たな中道左派連立が誕生した。Progressive Nederland AmsterdamとD66が組んだこの連立は、今週ズイドーストで70ページにわたる合意文書を発表した。柱となるのは手頃な住宅の確保、教員の増員、そして17歳以下を対象とした公共交通の無料化という生活密着型の政策だ。しかし、経済界や外国人コミュニティ、さらには野党からは「誰のためのアムステルダムなのか」という疑問の声が相次いでいる。
スタートアップの「ス」の字もない合意文書
合意文書でとりわけ注目を集めたのが、テック産業への言及の乏しさだ。オランダスタートアップ協会(DSA)のヨハン・スハープ氏は「文書中に『スタートアップ』という単語が一切登場しない」と指摘する。前の連立が明確に掲げていた「欧州テックハブ」という目標は、今回の合意から姿を消した。折しもアムステルダムは、欧州テックハブの新たなランキングで5位から7位へと順位を落とし、ミュンヘンとケンブリッジに追い越されたばかりだ。DSAはシンガポール、イタリア、中東などに優秀な人材を奪われつつあるとし、このまま手を打たなければ順位はさらに下がると警告している。
経済担当のメラニー・ファン・デル・ホルスト氏は「スタートアップやスケールアップが花開ける環境を整えたい」と述べたものの、専門家らはそうした言葉が具体的な政策として文書に落とし込まれていないと口をそろえる。経済学者のバーバラ・バールスマ氏も先月、高度技能移民の数が急激に減少しており、生産性や将来の経済成長に深刻な影響を及ぼしかねないと警鐘を鳴らしている。
「国際居住者」への言及がほぼ皆無
経済面と並んで問題視されているのが、外国人居住者への対応だ。アムステルダム市民の約25%はEU域外出身であり、さらに13%は他のEU諸国からの移住者だ。それにもかかわらず、合意文書には「インターナショナル(外国人居住者)」への言及がほとんどない。
親欧州政党VoltのジュリエットBroersen氏は「国際コミュニティへの目配りが欠けている。国際学生も若いヨーロッパ人も外国人居住者も、一時的な客や経済的資産ではなく、住民であり隣人だ」と批判する。CDAのロヒール・ハフェラール氏はさらに踏み込み、各地区でのオランダ語教室の開設、実務的・法的な相談に対応するワンストップ窓口の整備、国際学校・医療・住宅へのアクセス改善をこの連立に求めている。
ボランティアの70%が外国人コミュニティ出身というNPO「サーブ・ザ・シティ」の創設者ブリヒッテ・フォンク氏も「合意文書からはコミュニティの一体感が伝わってこない。アムステルダムが本当に全員のための都市を目指すなら、外国人が本当に『ここが家だ』と思えるような取り組みが必要だ」と訴える。
在蘭日本人にとっての意味
在蘭日本人の多くは、高度技能移民としてこの都市に暮らしている。住宅や行政手続き、子どもの教育において言語の壁に直面した経験を持つ人も少なくないだろう。ワンストップ窓口や多言語対応の行政サービスが整備されるかどうかは、日常生活の質に直結する問題だ。また、スタートアップや技術系企業で働く人にとっては、アムステルダムの国際的な競争力の行方が雇用環境にも影響しうる。新連立が批判を受けて政策を修正するかどうか、議会審議の動向を注視しておきたい。
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情報源: DutchNews
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