イェッテン首相、欧州の米国依存を「ナイーブ」と批判――GDP比5%防衛目標を法制化へ
ハーグ安全保障会議で示した、自立的欧州防衛への転換宣言
オランダのロブ・イェッテン首相は5月、ハーグで開催された「次世代安全保障会議(Next Gen Security Conference)」の開幕演説に立ち、今年2月の就任後初となる本格的な外交政策スピーチを披露した。D66党首でもあるイェッテン首相は、欧州がこれまで「大したコストも払わずに米国の安全保障の傘の下に留まれるというナイーブな考えにしがみついてきた」と痛烈に批判し、欧州が自立した防衛力を持つべき時代が来たと宣言した。
GDP比5%目標を法律に刻む
演説の核心となったのが防衛支出の法制化だ。オランダは、NATOが掲げるGDP比3.5%の「ハード」防衛支出を法律に明記する方針を打ち出した。これは昨年6月のハーグNATOサミット前にスホーフ前内閣が示した政策公約をさらに一歩進めるものだ。加えて、サイバーセキュリティやインフラ整備などを対象とする1.5%分の広義安全保障支出も合わせ、総計でGDP比5%を法律に盛り込む。首相はこの大幅な増額を「米国との距離を置くためではなく、同盟をより対等に、そしてより強固にするため」と位置づけた。
なお、欧州が防衛の自立を真剣に考えるべきだった転換点として、イェッテン首相は2022年のロシアによるウクライナ全面侵攻よりさらに前、2014年のMH17撃墜事件をあげた。あの時点ですでに警鐘は鳴っていたと強調し、長年にわたる楽観的な安全保障観を自省する姿勢を見せた。
インド・フランス・ウクライナ——三つの新戦略軸
イェッテン首相はオランダの外交・防衛政策を導く三つの原則として、「国際法秩序の擁護」「大西洋横断の安全保障構造の刷新」「新たなパートナーシップの構築」を掲げた。
「新たなパートナーシップ」の柱として注目されるのが、インドとの協力関係の深化だ。インドがグローバルな半導体バリューチェーンの10%を目標に掲げるなか、オランダを代表する半導体製造装置メーカーASMLが重要な役割を担うとされる。グローバルサウスとの連携強化という文脈でこの関係を位置づけた点は、オランダの産業外交の新方針を示唆する。
フランスとは、NATO枠組みの中での欧州核抑止に関する戦略的対話を進めていると表明。ウクライナについては「EU加盟への不可逆的な道を歩んでいる」と支持を明確にし、将来的にEUの東側翼を担う「歴戦の頼もしいパートナー」になると述べた。
イランへの「難しい立場」——原則と現実の間で
演説ではイランをめぐる複雑な外交判断も示された。イェッテン首相は、米国とイスラエルによるイランへの攻撃について「国際法違反であることは明白だ」と改めて言明した一方、「イラン体制は世界に対して核の脅威をもたらしており、自国民に対しても極めて残酷で抑圧的だ」とも述べた。「それは難しい立場ではないか。そうかもしれない。だがそれが現実だ。だからこそ現実主義的でなければならない」と語り、原則と現実の間で冷静な判断を貫く姿勢を示した。
今回の会議はオランダが毎年開催する安全保障フォーラムとして定着させることを目指しており、翌日にはアメリカのジョー・ポポロ大使や前フィンランド大統領サウリ・ニーニスト氏らが登壇した。在オランダの日本人にとっても、防衛支出の増加が税制や公共予算配分に波及する可能性があり、オランダ社会の今後の政策論争を注視する必要がありそうだ。
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情報源: DutchNews
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