オランダ人の8割超「気候政策のコスト負担は不公平」——市民と大企業の格差感が政策支持を揺るがす
SCP報告書が示す「怒り」の拡大と、揺らぐ気候対策への民意
オランダ国民の大多数が気候変動対策そのものの必要性は認めながらも、そのコスト負担のあり方に強い不満を抱いていることが明らかになった。オランダ社会文化計画局(SCP)が発表した新報告書によると、国民の82%が、気候変動対策にかかるコストは市民と大企業の間で不公平に分配されていると感じている。生活費の上昇を具体的に心配する人も69%に達しており、市民の間に広がる「割を食わされている」という感覚が、政策への支持基盤を静かに侵食しつつある。
「大企業は優遇、市民には重荷」という不満
SCPの研究者ヨフォンネ・デ・クライゼナール氏は、調査結果についてこう分析する。「多くの人が、『大きな汚染者』、とりわけ大企業が十分な負担をせず、十分な対策もとっておらず、優遇されていると感じている。一方で市民は相対的に重く課税されていると受け止めている」。この「感じられる不公正」こそが、気候政策への支持を損なうリスクだとSCPは警告する。
具体的な例として報告書が挙げるのが、住宅の省エネ改修をめぐる格差だ。賃貸住宅の居住者や低所得者にとって、自宅を断熱改修したり、太陽光パネルを設置したりすることは現実的に難しい。一方、経済的に余裕のある層は補助金を活用しながらエネルギーコストを下げ、むしろ恩恵を受けやすい構造になっている。制度の設計が、意図せず格差を拡大しているという指摘だ。
「気候ばかりが話題に」——広がる反感と社会の分断
気候問題への注目が他の社会課題と比べて過剰だと怒りを感じる人の割合は、わずか1年の間に24%から34%へと急増した。デ・クライゼナール氏は不満が増した理由について「明確にはわからない」としながらも、社会集団による意識の差が非常に大きいことを強調する。大学・高等職業教育(HBO)修了者は気候・自然・環境への懸念が平均を上回る一方、他の教育水準のグループでは犯罪・安全・生活コストへの不安が前面に出るという。価値観と生活実感のズレが、気候政策をめぐる議論を難しくしている。
ただし、気候対策への支持が消えたわけではない。7割のオランダ人が気候対策とオランダの国際的な貢献を重要だと考えており、この傾向はあらゆる社会層に共通している。公共交通への投資拡充や汚染企業への増税については幅広い賛同が得られており、「何もしなくていい」という声が主流になっているわけでもない。
在蘭日本人にとっての視点
この調査結果は、オランダに暮らす外国人にとっても無関係ではない。エネルギー価格の高止まり、電気自動車や省エネ機器への政策誘導、そして将来的な税制変更は、賃貸暮らしの多い在蘭日本人の日常生活にも直接影響しうる。また、気候政策をめぐる社会の感情的な温度差は、職場や近隣コミュニティでの会話の背景としても意識しておく価値があるだろう。SCPの報告書は、数字の裏にある「公正さ」への渇望が、今後のオランダの政治議論を左右する重要な変数になると示唆している。
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情報源: NOS Algemeen
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