イスラエルがロシア批判を避ける理由――防衛専門家が読み解く複雑な関係
ウクライナ侵攻をめぐり、中立的姿勢を保ち続けるイスラエルの事情とは
ロシアによるウクライナ侵攻に対し、西側諸国の多くが明確な批判と支援を打ち出すなか、イスラエルは一貫して慎重な立場を維持している。欧米の同盟国からの圧力を受けながらも、ロシアへの直接的な非難や武器供与を避け続けるイスラエルの姿勢は、国際社会で注目を集めてきた。オランダの防衛専門家コー・コレインは、この複雑な構図の背景を丁寧に解きほぐす。
ロシアとの「実務的関係」が生む制約
イスラエルがロシア批判に慎重な最大の理由のひとつが、シリアにおける軍事的プレゼンスだ。イスラエル軍はシリア領内でイランの武装勢力やヒズボラを標的とした空爆を繰り返しており、その作戦遂行にはロシアとの「非公式な調整」が不可欠とされている。シリアにはロシア軍も展開しており、イスラエルが誤ってロシア側の資産を攻撃しないためにも、両国間の軍事ホットラインは機能し続けている。この実務上のチャンネルを維持するためにも、イスラエルはロシアとの関係を必要以上に悪化させられないという構造的制約が存在する。
ユダヤ系ディアスポラと移民政策の視点
もうひとつの要因として、コレインはロシアおよび旧ソ連圏に暮らすユダヤ系コミュニティへの配慮を挙げる。ロシアには約15万人のユダヤ系住民が暮らしているとされ、イスラエルにとって彼らの安全や移住の自由を確保することは長年の政策的課題だ。ロシア政府を公然と敵視した場合、こうしたコミュニティへの影響が懸念される。加えて、イスラエルには旧ソ連出身のユダヤ人移民が多数定住しており、国内政治的にもロシアとの対立を深めることへの抵抗感がある。
在蘭日本人にとって、この問題が示すもの
コレインは50年にわたりオランダ国民に武力紛争の解説を提供してきたベテランであり、その分析は単なる二項対立に収まらない地政学の複雑さを浮き彫りにする。ウクライナ支援を積極的に進めるオランダをはじめ、NATOやEUが結束を強調する一方で、中東の同盟国であるイスラエルが異なる論理で動いているという現実は、「西側の連帯」という概念の限界を示してもいる。在オランダの日本人にとっても、同様の構図——日本がロシアへの制裁に加わりながらも、エネルギーや北方領土問題で微妙なバランスを保ってきた経緯——と重ねて読むと、国際政治における「原則と実利」のせめぎ合いがよりリアルに感じられるだろう。
広告掲載にご興味のある方は こちら
情報源: NU.nl
関連ニュース

窒素削減計画、深夜論戦を経ても内閣が方針を堅持――農家は議事堂前でトラクター抗議
オランダ政府、英軍向けウラン濃縮をUrencoに承認 防衛協力の新局面

ケティコティ、窒素政策審議、そしてコーマン監督の辞任――7月1日のオランダ

ボックス3課税法案、上院の採決を夏以降に延期——秋の予算発表が焦点に
保育施設スタッフの半数を学生で賄う特例措置、懸念の声を押し切り2年延長
保育施設スタッフの半数を学生で賄う特例措置、懸念の声を押し切り2年延長
