オランダの歪んだ税制:労働には重く、資産には軽い構造の深刻な代償
CPB報告書が浮き彫りにした格差の本質、改革を阻む政治の壁
オランダ中央計画局(CPB)が今週公表した報告書が、改めて税制の不均衡を鮮明にした。超富裕層が一般市民より速いペースで資産を増やしながら、実質的な税負担は低いという結論だ。この事実が世間の怒りを買うのは当然だが、問題の本質は超富裕層だけに向けた視線では捉えきれない。
CPBが描く格差の構図はより広範にわたる。オランダでは労働所得への課税が相対的に重い一方、不動産・年金・私有有限会社(BV)を通じた資産には軽い課税しか課されていない。その結果、賢く資産を組み替えられる者や税務アドバイザーを雇える者ほど、実質的な負担を圧縮できる仕組みになっている。同報告書は「子どもの資産と親の資産の相関が強まっており、特に資産分布の上位層でその傾向が顕著だ」と指摘する。歴史的規模といわれるベビーブーム世代の相続ラッシュが今後到来することで、この格差はさらに広がるとみられている。
中間層の内側にも潜む不公平
見落とされがちなのが、中間層の内部における課税の不均衡だ。オランダの家計資産の大部分は住宅と年金基金に集中しており、いずれも課税は手厚く優遇されている。一方、民間賃貸住宅に住みながら貯蓄・投資をしている世帯は、ボックス3(box 3)課税の対象となり、持ち家の含み益を持つ所有者より高い実効税率を負担するケースがある。
住宅への低課税についてCPBは改めて問題点を列挙している。「住宅価格を押し上げるだけで、住宅の供給増加には結びつかない」というのがその核心だ。割を食うのは、初めて家を探す若い世代と、購入は難しいが社会住宅の所得基準を超えてしまう中間所得層だ。この層はしばしば、より高い住居費を民間賃貸で負担し続けることになる。
加えて、高齢化の進展が現役世代への課税圧力をさらに高める構造も見逃せない。就労人口が縮小するなか医療保険料は上昇し続けており、経済に占める割合が縮む労働所得に税負担が集中する傾向は今後も強まるとみられている。
改革を阻む政治の壁
こうした問題は今に始まったものではない。労働課税を軽くし資産課税を引き上げるべきだという分析は、専門家や官僚レベルでは長年積み上げられてきた。CDAは2025年、住宅市場の改善を目的に住宅ローン利子控除の縮小を打ち出す方針転換を見せ、D66とともに「労働と資産の負担バランスの是正」を連立協議の場で訴えた。しかしVVDがこれを阻み、いずれの改革も実現しなかった。
在蘭日本人の視点から見ても、この構造は無関係ではない。就労ビザで働く駐在員や現地採用者は、労働所得への課税が直撃する立場に置かれやすい。また持ち家取得をめぐる競争において、資産を持つ親世代のサポートを受けられるかどうかが、住宅購入の可否を左右する現実は日本人にとっても他人事ではないだろう。税制の「歪み」は単なる政策論争にとどまらず、日々の生活コストや将来設計に直接響く問題として、引き続き注視が必要だ。
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情報源: NRC
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