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山火事は煙柱を見てこそわかる――カタルーニャの消防士がオランダで解き明かした「炎の気象学」
社会 読了 3分

山火事は煙柱を見てこそわかる――カタルーニャの消防士がオランダで解き明かした「炎の気象学」

ワーヘニンゲン大学で博士号を取得したマルク・カステルノウ氏が警告する、北上する火災リスク

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カタルーニャ出身の消防司令官マルク・カステルノウ氏(54)が、ワーヘニンゲン大学で博士号を取得した。研究テーマは、大規模山火事が生み出す巨大な煙柱が大気上層に与える影響だ。長い夏の現場を終えたばかりで疲れた様子の彼は、大学の食堂で静かに語った。「知識は雲の中にある」と。

1970年代の知識で戦う消防士たち

山火事の研究が抱える根本的な問題は、そのデータの古さにある。カステルノウ氏によれば、現在も世界各地で使われている山火事の延焼モデルは、1970年代の燃焼挙動を基礎としている。当時の火災は地表を這うように燃え広がるものが主流だったが、現代の極端な山火事は大気の高層で独自のダイナミクスを生み出す。古いモデルでは、そのメカニズムを正確に捉えることができない。

この空白を埋めるために、カステルノウ氏は実地でのデータ収集を決意した。ワーヘニンゲン大学の火災地理学者カテレイネ・ストーフ准教授との縁でオランダに活動拠点を置き、2021年から2025年にかけてスペイン・チリ・ギリシャ・オランダで約150件分の煙柱データを気象バルーンで収集した。燃え盛る炎に近づきながら、バルーンを煙柱へと飛ばす作業は常にチームで行い、安全確保と航空消火機との調整を徹底したという。

炎が自ら「呼吸」する瞬間

研究が明らかにしたのは、山火事が一定規模を超えると「自律的な気象システム」として機能し始めるという事実だ。煙柱が大気上層に達するほど巨大になると、周囲の大量の空気を吸い込み、それがさらなる燃焼を促す。「火が自分で天気を作る」という現象だ。従来の理論では、煙柱の熱量はある高度以上では大気を押し上げるのに不十分だと考えられていた。しかし実測データは、上昇する気塊の「慣性(モメンタム)」によって、煙柱がはるかに高くまで成長し続けることを示した。

2023年にチリで起きたサンタ・アナ周辺の山火事では、煙柱の観察中にカステルノウ氏が危険な兆候を察知し、消防隊員を安全地帯へ退避させた。その後2時間以内に「火積雲(パイロキュムラス)」が発生し、火勢が爆発的に拡大した。今夏スペインのアルメリア州で13人が犠牲となった火災も、従来モデルでは「弱まるはず」だった気象条件のなかで、突然時速0.5キロから5キロ超へと延焼速度が跳ね上がるという、このメカニズムで説明できる部分があるという。マドリード近郊で複数の火災が互いの気象条件に影響し合いながら燃え広がった事例も、研究チームは実測した。カステルノウ氏は「それが予想以上に激しく、衝撃的だった」と語る。

オランダも「無縁ではない」という現実

こうしたリスクはもはや地中海沿岸だけの問題ではない。カステルノウ氏は「火災シーズンはかつて7月から9月だったが、今は4月に始まり10月まで終わらない」と指摘する。今年はスペイン・フランス・ギリシャ・イタリア・トルコが壊滅的な被害を受けた一方、英国・スウェーデン・ドイツ・ベルギー、そしてオランダでも過去にない面積の自然地が焼失した。気候変動が山火事を「生み出す」わけではないが、「もともとあった火災をはるかに極端にしている」という彼の言葉は重い。

博士論文の冒頭には、カステルノウ氏が現場で失った9人の友人の話が記されている。1994年に4人、2009年には5人が帰らぬ人となった。「今ならあの時に何が起きたか説明できる。でも当時はわからなかった」。研究を続ける動機は、そこにある。オランダに暮らす人々にとって、この問いは他人事ではなくなりつつある。

情報源: NRC

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