ロブ・ケンプス、亡き母とブレルへの旅を舞台に昇華
「ひとりにしないで」——喪失と憧憬が交差する新作公演
オランダのタレント、ロブ・ケンプス(40歳)が新たな一人舞台の制作を発表した。タイトルは「Laat me niet alleen(ひとりにしないで)」。母親がホスピスで療養中というもっとも過酷な時期に、少年時代から憧れ続けたベルギーのシャンソン歌手、ジャック・ブレルの墓を訪ねる長い旅に出た体験が、作品の核となっている。
1万4000キロの旅が生んだ作品
ケンプスが旅した距離は1万4000キロ以上。ブレルが眠るのは南太平洋のフランス領ポリネシア、マルキーズ諸島のヒバオア島だ。世界の果てとも呼べるその場所まで、母の病床を背にして向かうという選択は、一見すると矛盾しているように映る。しかし彼にとっては、その旅そのものが母との対話であり、自分自身を見つめ直すための時間だったとも言える。新作舞台では、この旅の記録が生の映像や音楽とともに舞台上に立ち上がる。
ブレルと母、二つの「別れ」
ジャック・ブレルはケンプスにとって幼い頃からのヒーローだった。愛、孤独、死をテーマに歌い続けたブレルの作品は、今回の舞台と深く共鳴する。「Laat me niet alleen」というタイトル自体、ブレルの楽曲「Ne me quitte pas(行かないで)」を想起させるような切実さを帯びている。舞台はこの二つの「別れ」——偉大なアーティストの死と、自分を育てた母との永遠の別離——を一つの物語として編み上げたものだ。
「母に似ている」という気づき
ケンプスは今回の制作を通じて、ある発見を語っている。「母親に自分が思っていた以上に似ている」という言葉だ。喪失の悲しみの中で、人は肉親の面影を自分の中に見出すことがある。この作品は、エンターテインメントとして楽しめる旅の記録であると同時に、親の死という普遍的な体験を正面から見つめた私的なドキュメントでもある。オランダで長く愛されてきたタレントが、自らの内面をこれほどまでにさらけ出す舞台は異例とも言え、公演への注目が集まっている。在蘭の日本人にとっても、異国での親との別れや距離の問題は決して他人事ではない。ケンプスの旅と問いかけは、多くの観客の心に響くものとなりそうだ。
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