手術前3週間の体力強化で合併症リスクが4分の1減——蘭研究が実証
プレハビリテーションが婦人科がん手術の転帰を変える
「手術前に体を整えておけば回復が早い」——そう聞けば直感的に納得できる。しかしその効果を科学的に示した研究は、これまで驚くほど少なかった。ナイメーヘンのラドバウド大学医療センター(Radboudumc)で今年8月、研究者ヨエル・ダニス氏がこの空白を埋める研究で博士号を取得した。婦人科がん手術を対象とした大規模試験において、術前の「プレハビリテーション(prehabilitatie)」が術後合併症を明確に減らすことを実証したのだ。
426人のデータが示した明確な効果
研究には子宮がん・卵巣がん・外陰がんを抱える426人の女性が参加した。このうち180人が術前プログラムを受け、246人が通常ケアの対照群となった。プログラムの中心は週3回の筋力・心肺トレーニングで、そこに管理栄養士による食事指導と心理専門家によるサポートが組み合わさった。期間は原則3週間。診断から手術まで時間的余裕が少ない現実に合わせた設計だ。
結果は明確だった。対照群では術後合併症の発生率が37%だったのに対し、プレハビリテーション群では27%へと約4分の1の減少を示した。傷の治癒不全、感染症、腸の問題といった合併症は、患者の回復を大幅に遅らせるだけでなく、長期入院や抗生物質投与など追加的な負担につながる。「合併症が起きなければ、人々はより早く回復し動き出せる。そこに最大の意義がある」とダニス氏は語る。
栄養指導の目的は、減量ではなく「良質な栄養」の確保だった点も注目される。婦人科がん患者の一部はむしろ腹部症状による栄養不足を抱えており、全員にタンパク質とビタミンの補給が行われた。心理サポートは疾患との向き合い方や手術への心構えに焦点を当て、必要に応じて不安や抑うつへの介入も実施された。
精神面への波及効果と、普及への壁
参加者からは身体的な効果にとどまらない声が届いた。「ただ心配するだけでなく、本当に何かに取り組めている」という感覚が、多くの女性に精神的な安定をもたらしたという。手術という大きな出来事を前に、能動的に準備できることの意味は小さくない。多くの参加者が、プログラムを手術後も続けたいと回答した。
整形外科領域ではすでに術前の運動プログラムが普及しているが、その効果は科学的には十分に証明されてこなかった。今回の研究は、婦人科腫瘍という異なる領域でより包括的なアプローチの有効性を示したという点で、臨床的な意義は大きい。
現在、ラドバウド大学医療センターでは大規模腹部手術にプレハビリテーションを標準導入しており、病院が費用の一部を独自に負担している。しかし保険会社による適用は実現しておらず、全国的な普及にはこの壁を越える必要がある。ダニス氏は「今後、どの患者に何が必要かをより絞り込む研究も進んでいる。将来的には広く保険適用されることを望んでいる」と述べている。
在蘭日本人が知っておくべきこと
オランダでは毎年、婦人科がんだけで4,000〜5,000人が新たに診断を受けており、大規模な腹部手術を要するケースは少なくない。在蘭の日本人女性にとっても、婦人科系の手術を受ける可能性はゼロではない。主治医からプレハビリテーションの提案がない場合でも、術前の運動・栄養・心理的準備について積極的に相談することは、今後ますます合理的な選択肢となりそうだ。保険適用の議論の行方とともに、この分野の研究動向は引き続き注目に値する。
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情報源: NRC


