青色LEDメガネがパーキンソン患者の睡眠障害を改善する可能性——オランダ研究チームが成果発表
薬では届かない「非運動症状」に光のアプローチ
パーキンソン病といえば、手の震えや歩行困難といった運動症状が広く知られている。しかし患者が日々の生活で最も苦しむのは、むしろそれ以外の症状かもしれない。睡眠障害、抑うつ、記憶の問題——こうした「非運動症状」は従来の薬物治療では十分に対処できず、長年にわたって医療の盲点となってきた。そこに、青色LEDを搭載したメガネという意外な解決策が登場しつつある。
薬で届かない症状の重さ
10年前に46歳でパーキンソン病の診断を受けたIngrid van Es-Koeter氏は、元泌尿器科医だ。「私はまるで古いスマートフォンのようなもの。充電しても決して満タンにならない」と語る彼女は、今は患者団体「Parkinson Vereniging」で権利擁護の活動を行っている。その言葉は、この病気の本質を端的に表している。
ユトレヒトのSt. Antonius病院の神経科医Jorrit Hoff氏は、「1990年代まで私たちはパーキンソン病の運動面しか治療してこなかった。それ以外が見えていなかったことは今思えば奇妙なことだ」と振り返る。現在の標準治療は依然として薬物療法が中心であり、代表的なレボドパ(L-dopa)は運動症状には有効なものの、非運動症状にはほとんど効果がない。さらに薬の副作用を抑えるために別の薬が必要になるという悪循環も生じやすい。
「生体時計」を光でリセットする
こうした状況を打開する糸口として、Radboudumcの神経科医Bas Bloem氏らの研究チームが注目したのが光療法だ。パーキンソン病患者は脳内の生体時計が乱れており、昼間に眠気が強く夜は眠れないという逆転したリズムに苦しむ。目の光感受性細胞が青色光に最もよく反応することは以前から知られており、トップアスリートが長距離移動後のジェットラグ解消に青色光メガネを使っている例もある。
研究チームはこの知見をパーキンソン患者に応用した。患者たちは1日2回・各1時間、2週間にわたって青色LEDメガネを着用した——起床直後と就寝数時間前というタイミングで。対照群には赤色光メガネを使用し、患者には青色光の有効性に関する情報は伏せた。睡眠の質は問診票で追跡され、入眠の速さ、夜中の覚醒回数、日中の眠気などが評価された。結果、青色メガネ群は2週間後に対照群を上回る改善を示し、研究終了から5週間後にはその効果がさらに拡大した。この成果は学術誌「Journal of Parkinson’s Disease」に掲載されている。
パイロット段階の成果、今後の課題
Hoff氏は今回の研究に直接関わっていないが、「睡眠障害は薬で対処しにくいパーキンソン症状の典型例。この生体時計へのアプローチは有望だ」と評価する。一方で「2025年の大規模研究では白色光療法が睡眠に有意な効果をもたらさなかったことも示されている」と指摘し、現時点ではあくまでパイロット研究であることを強調する。それでも「パーキンソン患者の苦しみを考えれば、試してみたいと思う患者の気持ちは十分理解できる」とも述べている。
Bloem氏自身は、青色光療法のほかにも、ダンスや芸術活動といった非薬物的アプローチを科学的に検証する取り組みを並行して進めている。芸術活動がストレスを軽減し入院回数を減らすという未発表のデータや、ダンスが自己肯定感と生活の質を高める可能性を示す小規模研究もある。「有効と証明されたものと、そうでないものの二択で考えるのが医学の常識だが、私の診察室ではもっと複雑なリアルがある」と彼は語る。
在蘭の日本人でパーキンソン病の家族を持つ方、あるいは自身が睡眠障害に悩む患者にとって、この研究は一つの選択肢として頭に置いておく価値があるかもしれない。副作用リスクが低いこのアプローチを、かかりつけの神経科医に相談してみることが、次の一歩となりうる。
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情報源: NRC


