転落事故で28年分の記憶を失った天文学者、7年の歳月をかけて博士号を取得
「一から学び直した」——後遺症と闘いながら研究を完遂したレオン・ハウベン氏の軌跡
アルンヘム在住の天文学者レオン・ハウベン氏(35歳)は、自分の誕生日を12月14日には祝わない。「パスポートにはそう書いてあるし、家族からも毎年お祝いのメッセージが届く。でも、あの日付に何の感慨も持てない」と彼は語る。代わりに彼が特別視するのは、2019年7月29日——スイスアルプスでの転落事故が起きた日だ。命を分けた一日が、ある意味で「新たな誕生日」になった。
15メートルの転落、そして記憶の消失
その日、ハウベン氏はクライミング中にアブザイル(懸垂下降)を行っていた。後にクライミングパートナーから聞かされた話では、岩壁に固定していたアンカーが外れたとみられる。15メートルを落下し、岩肌に身体を擦りながら180度回転して頭から着地した。山の岩棚で約45分間意識を失ったが、外傷ヘリコプターの轟音で目を覚ます。搬送された病院では簡易的なCTスキャンのみで退院を許可され、「数日間しっかり世話をすれば大丈夫」と告げられた。しかし翌朝、彼は自分がどこにいるのかさえわからなくなっていた。
事故後に記憶は緩やかに失われていった。街で友人に声をかけられても誰だかわからない。指導教官も、両親も、ほぼ初対面の他人同然となった。28年分の記憶の大部分が手の届かない場所へ消え、「世界がねっとりとした感触になった」と彼は表現する。事故直後のジャケットのポケットには病院からの手紙が入っていたことが後に判明した。「48時間以内にこれらの症状が出た場合は直ちに再受診を」と書かれていたが、彼はその手紙自体を忘れており、数週間後に母親が血の染みついたジャケットを洗濯して初めて見つけた。
博士課程の研究を、ゼロから再構築する
事故当時、ハウベン氏は博士課程の最終年にいた。研究テーマは、ドイツのエッフェルスベルク電波望遠鏡とオランダのLOFAR望遠鏡を連携させ、宇宙で起きる謎の現象「高速電波バースト(FRB)」をリアルタイムで捉えるソフトウェアの開発だった。エッフェルスベルクが高周波数帯でFRBを検知すると、LOFARが低周波数帯でその方向を追う——電波が宇宙の星間ガスを旅する際に生じる伝播遅延(約2分)を利用した巧みな設計だ。だがそのすべての知識が、頭の中から消えた。
「自分の名前が上に書かれた大量のコードを目の前にして、一行も意味がわからなかった」。プログラミングの基礎から、物理の公式を理解するための数学まで、中学・高校レベルの教科書を引っ張り出して一から解き直した。指導教官たちとの関係も再構築し直しながら、エッフェルスベルクのアーカイブデータに潜り込んで研究を再開した。「事故後は、不健康なほどの強迫的な学習意欲があった」と彼は振り返る。
後遺症と向き合いながら、7年後の達成
2026年9月末、ハウベン氏はついに博士号を取得した。取材はアルンヘム市内のコーヒーショップで行われたが、彼は終始耳栓を着用していた。事故後に残った感覚過敏の後遺症で、騒音の多い環境では極端に疲弊するためだ。博士号取得の翌日は、ほとんどベッドから出られなかったという。
記憶の問題は今も続いている。「失われた28年間の記憶のうち、どれが本当に自分の脳から来たもので、どれが人から聞かされて取り込んだものなのか判断できない」。真実を追求するよう訓練された科学者として、その曖昧さは今も重く心にのしかかる。それでも彼は、自分を新たに定義した7月29日を胸に、前を向いて研究を続けている。オランダに暮らす私たちにとって、この話はアイデンティティや記憶の意味、そして人間の回復力について深く考えさせる一つの物語だ。
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情報源: NRC


