出産直後に「対面ケアは無理です」――オランダ産後訪問ケアの人手不足が露わに
eコンサルトへの突然の変更、制度の抜け穴が浮き彫りに
すべての準備は万全のはずだった。担当スタッフの名前、割り当てられたケア時間数、出産直後に来てくれる訪問者――33歳のシモーネ・リッツァーさんは、第一子レオナルドの誕生に向けて、クラームゾルフ(産後訪問ケア)の手配をすべて整えていた。ところが出産の直後、ケア提供機関から告げられた言葉は予想外のものだった。「担当者が不在のため、対面ではなくeコンサルト(オンライン相談)になります」。シモーネさんは言葉を失ったという。
「規約上は問題なし」という現実
さらに当惑させられるのは、このケア提供機関が契約上・規約上は何も違反していないとされる点だ。つまり、シモーネさんのような状況に陥っても、利用者側には法的に異議を申し立てる明確な根拠がないのが現状である。出産という人生で最も体力的・精神的に消耗する瞬間に、画面越しの相談で代替されることを、誰も事前に十分な説明を受けないまま「同意」させられている格好だ。この事例はSNS上でも広く共有され、同様の経験を持つ母親たちから共感と怒りの声が相次いだ。
深刻化するクラームゾルフの人手不足
今回の問題の根底にあるのは、オランダ全土で続くクラームゾルフの慢性的な人手不足だ。クラームゾルフとは、出産後に資格を持つケアワーカーが自宅を訪問し、通常8〜10日間にわたって母子のケアや育児指導、家事補助などを行うオランダ独自の制度で、健康保険でカバーされる。しかし近年、担い手の不足から希望通りのサービスを受けられないケースが増加しており、特に都市部での需給の逼迫が指摘されている。産後の女性、とりわけ初産の場合は、授乳や赤ちゃんのケアに関する実地指導が欠かせず、オンライン相談では代替が難しいとの声は医療関係者からも上がっている。
在蘭日本人にとっても他人事ではない
オランダで出産を予定している、あるいは将来的に予定している在蘭日本人にとっても、この問題は無縁ではない。クラームゾルフは妊娠中に早めに申し込む必要があり、妊娠初期(12週前後)からの登録が推奨されている。しかし今回の事例が示すように、早期登録をしていても直前に内容が変更されるリスクがある。利用者側としては、契約内容の確認はもちろん、変更が生じた場合の対応について事前にケア機関と話し合っておくことが現実的な自衛策となりそうだ。制度の改善を求める声は高まっており、今後の政策的な対応が注目される。
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