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クモ恐怖症の真実――650種が生きるオランダで、恐怖を乗り越えるには
社会 読了 3分

クモ恐怖症の真実――650種が生きるオランダで、恐怖を乗り越えるには

世界的にも数%が該当するアラクノフォビア、有効な治療法とは

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秋になると、オランダの庭や窓辺には大きなクモが目立ちはじめる。あの丸々とした腹は、たくさんの獲物を捕らえ、体内で卵が膨らんでいるサインだ。雄はすでに交尾を終えて死に、雌たちが次の世代を宿しながら巣の中央に鎮座している。オランダには少なくとも650種の在来クモが生息しており、人里から離れた場所でなくとも、秋口になればその姿を避けることはむずかしい。

クモ嫌いの人にとって、これは厄介な季節だ。グローニンゲン大学で心理学を研究するイリナ・マセルマン准教授によると、クモ恐怖症(アラクノフォビア)に該当する人は世界全体で数%とされているが、「クモへの恐怖」はさらに広く分布している。同准教授が実施した調査では、女性回答者の30%が何らかのクモへの恐怖を経験していると回答した。恐怖症と「苦手意識」の境界線は必ずしも明確ではないが、日常生活に支障が出るレベルになれば、それは臨床的な問題となりうる。屋根裏や庭に近づけなくなる、外出が制限されるといった事例も珍しくないという。

「毒があるから怖い」は誤解

アラクノフォビアが非合理的な恐怖である証拠として、しばしば引用されるのがオーストラリアとの比較だ。オーストラリアには人体に害を及ぼしうる毒グモが実際に生息しているが、アムステルダム大学で実験臨床心理学を研究するメレル・キント教授は「オーストラリア人とオランダ人のクモ恐怖症の発症率に大きな差はない」と指摘する。恐怖は毒性への合理的な判断から生まれるのではなく、脳が危険信号を過剰に発することで起きる。クモが部屋にいると感じた瞬間、「ライオンが目の前にいる」のと同じ反応が身体に走るのだ。

クモへの偏見は、恐怖症を持たない人々にも根強い。Naturalisとオランダ昆虫研究センターに所属するクモ研究者ペーテル・ファン・ヘルスディンゲン氏は、「昆虫に比べてクモの人気は圧倒的に低い」と苦笑する。国際アラクノロジー学会の会員はわずか約500名。オランダでは「全国クモ調査」が2023年、参加者不足を一因として11回目の開催を最後に幕を閉じた。しかし同氏は、見方が変われば魅力は無限だとも言う。顕微鏡でクモの目や紡糸突起を観察した途端、恐怖が好奇心へと変わった人を何人も見てきた、と話す。

恐怖から抜け出す「暴露療法」

治療においては、恐怖がいつ、どのように生まれたかはさほど重要ではないとマセルマン准教授は言う。生まれつきのものでもなく、必ずしも嫌な体験がきっかけとも限らない。周囲の人のリアクションを見て「学習」した恐怖も多い。現在、特定の恐怖症に対して最も広く使われる治療法は**暴露療法(エクスポージャー・セラピー)**だ。クモの写真を見ることから始まり、標本の観察、そして生きたクモとの接触へと段階的に慣れさせていく認知行動療法の一種である。キント教授は「実際に怖いのは、クモそのものではなく、恐怖を感じる自分自身への恐れだ。その恐怖をくぐり抜けることが回復につながる」と説明する。

在蘭日本人にとっても、秋は試練の季節かもしれない。庭の隅や窓枠にいつの間にか巣を張った大きなクモを見て、思わず声を上げた経験がある人もいるだろう。ただ、専門家が口をそろえるのは「クモはこちらから攻撃しない」という事実だ。オランダの在来種は、たとえ嚙んだとしても人体に深刻なダメージを与えるものはほとんどいない。南欧から北上してきた「ニセハイイロゴケグモ(valse wolfspin)」の嚙み傷はハチ刺されに似た痛みがあるとされるが、それも例外的なケースだ。まずは遠くから眺めてみることが、克服への第一歩になるかもしれない。

情報源: NRC

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