オランダ自転車チームに「恐怖の文化」、71人が告発した職場の実態
NOSと専門メディアの合同調査が明かす、威圧と沈黙の構造
オランダの自転車ロードレースチーム「Picnic-PostNL」が、長年にわたって威圧的な職場文化にさらされていたことが、公共放送NOSと自転車専門メディア「In De Waaier」の合同調査によって明らかになった。現役・元スタッフ計71人への匿名取材では、批判への報復、メンタルヘルス相談の無視、そして「誰でも替えが効く」という圧力が繰り返し語られた。チームは現在約120人を雇用し、サイクリング最高峰のワールドツアーに参戦する強豪だが、その栄光の裏で深刻な人権侵害が進行していたとされる。
グランツール制覇後に始まった「急進化」
証言によれば、職場環境の悪化は2013〜14年のツール・ド・フランスで独マルセル・キッテルがステージ優勝を重ねた頃から始まったという。成功体験を経た経営陣は「チームの支配力を失うことへの妄想」に囚われ、規則を次々と増やしていったと複数の関係者が語った。さらに、オランダ人選手トム・デュムランが2017年のジロ・ディタリアを制した後、経営陣の姿勢はより「急進化」したとも証言されている。あるスタッフはチームの管理体制を「独裁」と表現し、別のスタッフはメンバーが「操り人形」のように扱われていたと述べた。
自傷を考えた元選手の告白
調査の中でも特に重い証言を寄せたのが、元オランダ代表選手のマルティン・トゥスフェルドだ。彼はチームの戦術に疑問を呈したことで主要レースのメンバーから外され、極度の不安状態に陥ったと語った。自傷行為を考えるほど追い詰められたと告白し、チームを離れた現在も精神的な回復の途上にあると述べている。また、別の選手がメンタルヘルスのサポートを求めた際、スポーツディレクターのルディ・ケムナから「私は心理士を信じない」と言い放たれたという証言も飛び出した。オランダプロサイクリスト協会(VVBW)はNOSに対し、過去18か月間にわたって同様の訴えを聞いており、涙ながらに電話してきた選手もいたと明かしている。
オーナーは沈黙、問われる組織的責任
NOSはチームオーナーのイワン・スペケンブリンクに繰り返しコメントを求めたが、文書・口頭いずれの形でも回答を拒否している。トップの説明責任が問われる中、この調査はオランダのスポーツ界における職場環境の問題を改めて浮き彫りにした。在蘭日本人の中にもサイクリングを愛好する人は多い。自転車大国として知られるオランダだからこそ、競技の頂点に立つチームの内側でこうした文化が醸成されていたという事実は、スポーツ組織のガバナンスのあり方について広く問い直す契機となりそうだ。
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情報源: DutchNews


