ナチス略奪のカンディンスキー作品、ロンドンで約32億円落札
アムステルダムのユダヤ人家族から奪われた名画、80年超を経て相続人の手へ
ロシア表現主義の巨匠ワシリー・カンディンスキーが1907年にパリで描いた作品「Das bunte Leben(色彩豊かな生)」が、ロンドンのクリスティーズオークションで約2,700万ポンド(約3,200万ユーロ)で落札された。この絵画はナチス占領期にアムステルダムのユダヤ人家族から奪われ、ドイツの美術館に数十年にわたって展示されてきた経緯を持つ。
アムステルダムから略奪された名画
絵画の元の所有者は、エマニュエル・レーベンシュタインとヘドウィヒ・レーベンシュタイン夫妻。20世紀前半にアムステルダムに居住し、ダム広場でミシン工場を営んでいた実業家一家だ。夫妻はヤン・トーロップやヨゼフ・イスラエルスらの作品を含む豊かな美術コレクションを有しており、カンディンスキーの本作も1927年に購入している。
ナチス・ドイツがオランダを占領した直後、この作品は競売にかけられ、ユダヤ人美術収集家のサル・スライパーの手に渡った。その後、スライパー家がバイエルン州立銀行に売却し、同銀行はミュンヘンの市立ギャラリー「レンバッハハウス美術館」に永久貸与した。縦130センチ、横162センチの大作は、そこで数十年にわたり一般公開され続けた。
80年超を経た返還と売却
その後の調査で、本作が1940年に何者かの依頼で美術館職員によって競売会社へ運び出され、販売に供されたことが判明。研究者たちはナチスによる差し押さえを示す「数多くの証拠がある」と結論づけた。ドイツ連邦検察はこの調査結果を受け、2023年に略奪美術品と正式認定し、バイエルン州立銀行はレーベンシュタイン家の相続人に絵画を返還した。
今回の売却は、同じ相続人がすでに大型の返還を経験した後に行われたものでもある。アムステルダム市立美術館(ステデリック美術館)と長年の係争を続けた末に取り戻したカンディンスキーの別作品「Bild mit Häusern」は、2022年2月まで同館の常設展示室に掲げられていたが、返還後の2023年に約6,000万ユーロで売却されている。
在蘭日本人にとっての文脈
オランダに暮らす者にとって、この一連の経緯はアムステルダムという街が持つ歴史の複雑さを改めて示している。レーベンシュタイン夫妻はダム広場で事業を営んだ市民であり、彼らのコレクションはこの街の文化的土壌のなかで育まれた。ナチス占領が残した傷跡は、美術品返還という形でいまも現在進行形の問題であり続けている。ステデリック美術館をはじめオランダの公共機関でも略奪美術品の調査・返還は継続しており、今後も類似の事例が浮上する可能性は否定できない。
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情報源: NOS Algemeen


