米国のICC敵視は根深い——「世界の警察官」は罰ではなく報酬を求める
制裁発動まで半年の猶予、元外交官たちがオランダと欧州に結束を訴える
トランプ政権が国際刑事裁判所(ICC、本部・ハーグ)への制裁を発表した。ただし制裁の発動は半年後とされており、その猶予期間をめぐって、オランダの元外交官や元高官たちが警戒の声を上げている。NRCが複数の元外交官に取材し、米国とICCの深い歴史的対立を掘り起こした。
「世界の警察官」が抱く免責の論理
米国のICC敵視は、今に始まったことではない。2002年春、当時のオランダ駐米大使ボウデウェイン・ファン・エーネナームがジョージ・W・ブッシュ大統領に信任状を呈出した際、ブッシュはこう打ち明けたという。「私はヘンリー・キッシンジャーのように、あなたの国の法廷に被告として立たされる恐怖で夜も眠れないなどという思いはしたくないのです」。大使はその言葉に、米国の根深いICCアレルギーを直感した、と回顧録に記している。
同年夏、米上院は「ハーグ侵攻法」を75対19という圧倒的多数で可決した。これはICCに拘束された米国人を軍事力で奪還することを認める法律で、共和党だけでなく、後に民主党の大統領候補となるジョン・ケリーら30人の民主党議員も賛成に回った。「世界の警察官」として危険を冒してきた米国は、罰ではなく報酬を受けるべきだという自負が、当時の米国の自己像に深く刻み込まれていた。
EU分断工作への懸念と「ノー」を言い続ける覚悟
その後、ICCが米国人を実際に訴追しない限りは対立が表面化しなかったが、2018年にアフガニスタンでの米国関連企業の戦争犯罪疑惑をめぐる予備調査が始まると、トランプ政権一期目はICC職員の入国を禁じた。またバイデン政権は、プーチン露大統領の訴追には喝采を送りながら、ネタニヤフ・イスラエル首相の訴追には「言語道断」と反発するなど、米国の姿勢は一貫して機会主義的だ。
こうした経緯を踏まえ、元高官のエド・クロネンブルグ氏は「半年の猶予は、オランダやEU諸国を各個撃破するための時間だ」と指摘する。「貿易関税とは違い、国際法に妥協点はない。対応は冷静に、しかし明確に。『あなた方の意図は分かった。でもノーだ』と言い続けることが重要だ」と語る。ファン・エーネナームも「EU内には必ず梯子を外す国が出てくる」と欧州の結束の脆さを憂える。一方でシュウエル元駐米大使は、ボルソナーロ元ブラジル大統領のような指導者がワシントンから電話一本で翻意しかねないと述べ、「ICCを支持する国が100か国を割り、80か国を割ったとき、果たして意味を持ち続けるか」と問う。
オランダ、そして欧州にとっての意味
シュウエル氏は最後にこう断言する。「ICCを手放せば、次は国連、WTO、そして国際秩序全体の基盤が崩される。それはオランダの利益にならない」。イェッテン首相に対しては、「ルッテ前首相はオーバル・オフィスでノーと言えた。イェッテン氏にもそれができるはずだ」と促す。
在蘭日本人にとっても、ハーグはICCの本拠地であり、国際司法の象徴的な地だ。半年後に迫る制裁発動に向け、オランダ政府がどのような立場を取るかは、日本を含む国際社会全体の法秩序にも直結する問題として注視する必要がある。
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情報源: NRC




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