麻薬密輸が急増するなか、オランダ税関が予算削減の危機に直面
麻薬密輸が急増するなか、オランダ税関が予算削減の危機に直面
「安全保障機関」に分類されず、追加資金も届かない構造的矛盾
オランダ税関のナネット・ファン・スヘルフェン長官官は先週、議会に提出したポジションペーパーのなかで、深刻な警告を発した。麻薬密輸の手口が急速に進化し、犯罪組織からの圧力が増すなか、税関はむしろ予算削減の憂き目にさらされているというのだ。
制度の「隙間」に落ちた税関
問題の核心は、オランダ税関が法制度上、正式な「安全保障機関」に分類されていない点にある。政府は今般、警察や情報機関など安全保障セクターに対して追加の強化予算を配分しているが、財務省管轄下にある税関はその対象外となっている。一方で、政府部門全体を対象とした歳出削減の波には飲み込まれる形だ。税関の2027年度予算は約9億8,200万ユーロとされているが、削減幅によっては現場の執行能力に直接的な打撃を与えかねない。ファン・スヘルフェン長官は「より賢い働き方を模索しているが、効率化だけではこの矛盾を解消できない」と率直に認めている。
急増する押収量と巧妙化する密輸手口
現場の状況は切迫している。2026年上半期のコカイン押収量は1万9,332キロと、2025年同期比で20%増加した。この数字はすでに昨年の年間総押収量約2万4,500キロに迫る水準であり、年間通算では過去最高を更新する可能性がある。さらに違法タバコも上半期だけで1億600万本以上を押収したという。
ギャング組織の適応力も侮れない。長官のペーパーが名指しした新たな手口には、薬物を海中に投棄し小型船で回収する「シードロップ」、コカインを他の素材に染み込ませる手法、化学的な偽装、そしてプライベート機を利用した密輸などが含まれる。小規模な地方港が新たな抜け穴として狙われるリスクも高まっており、警戒態勢の維持には相応のリソースが不可欠だ。
職員を狙う汚職と暴力の脅威
ファン・スヘルフェン長官が「最大の懸念」として挙げたのは、犯罪ネットワークが税関職員個人へ向ける暴力と汚職工作の圧力だ。実際に汚職で逮捕された職員も出ており、脅威は決して抽象的なものではない。職員を定期的に身辺調査するスクリーニング制度の導入も検討されているが、実施までには相当の時間と費用がかかる見通しだという。
今月末には、デービッド・ファン・ウェール法務大臣と議会が組織犯罪対策について本格的な討議を行う予定だ。今回の長官の訴えが、税関の位置づけ見直しや予算配分の是正につながるかどうか、その審議の行方が注目される。ロッテルダム港を抱えるオランダにとって、税関の機能低下は麻薬密輸の「玄関口」化という国際的なリスクにも直結するだけに、在蘭の日本人コミュニティを含む社会全体が無関心でいられる問題ではない。
広告掲載にご興味のある方は こちら
情報源: DutchNews


