政府の住宅市場介入は解決の妨げか――オランダ「住宅支援大国」の逆説
CPB・DNB・ラボバンクの報告書が示す政策の限界と市場の現実
オランダは「住宅支援の王者(kampioen woonsteun)」と呼ばれるほど、公的資金を住宅分野に投じてきた国だ。住宅手当、社会住宅への補助、住宅ローン利子控除など、多層的な支援制度が長年にわたって維持されてきた。それにもかかわらず、住宅市場の逼迫は一向に解消される気配がない。NRCのポッドキャスト「Zo simpel is het niet」の最新回は、この根本的な矛盾に正面から向き合い、「過剰な政策介入が、むしろ解決策の実現を妨げているのではないか」という問いを投げかけている。
複数の機関が警鐘を鳴らす「政策の副作用」
この問いを支える根拠として、番組では複数の有力機関による報告書が参照されている。オランダ中央計画局(CPB)の「Perspectief op de woningmarkt」、オランダ中央銀行(DNB)の「Voldoende vraag, tekort aan kapitaal」、そしてラボバンクのレポートがそれぞれ、政策の市場への影響を分析している。欧州委員会の調査も引用され、オランダの住宅支援制度が需要を人為的に押し上げる一方、供給側の対応を鈍らせてきた可能性が示唆されている。また、公共経済研究所(Instituut voor Publieke Economie)が2025年9月に発表した「Betaalbaar Bouwen」も議論の俎上に載せられており、手頃な価格での住宅建設をいかに実現するかが喫緊の課題として浮かび上がっている。
民間賃貸の縮小と住宅取得コストの壁
議論のもう一つの焦点は、民間賃貸セクターの急速な縮小だ。オランダ中央統計局(CBS)のデータによれば、近年の規制強化や課税強化を背景に、民間賃貸住宅の供給は明確な減少傾向にある。家主が物件を売却・転用するケースが相次いでおり、賃貸を求める中間所得層の受け皿が失われつつある。社会住宅には入居待機リストが存在し、住宅購入には高い取得コストが立ちはだかる。三つの選択肢がいずれも容易でない状況が続いている。
CBSが公表する家計の住居費負担データも、この問題の深刻さを裏付けている。支援制度の恩恵を受けにくい中間所得層にとって、収入に占める住居費の割合は高止まりしたままだ。政府による介入が、皮肉にも最も支援を必要とする層を取りこぼしている構図が浮かび上がる。
在蘭日本人にとっての現実
住宅問題はオランダに暮らす日本人にとっても決して他人事ではない。民間賃貸市場の縮小は、特に駐在員や長期滞在者が頼りにしてきたセグメントに直接影響する。賃料の上昇、物件の選択肢の減少、そして競争の激化は、アムステルダムやロッテルダムなど主要都市ですでに体感されている現実だ。今回の議論が示すのは、こうした状況が一時的な需給の乱れではなく、長年の政策の蓄積が生み出した構造的な問題であるという認識だ。政策のあり方をめぐる議論は今後も続くとみられ、その帰趨はオランダに生きるすべての人々の住環境に影響を与えうる。
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情報源: NRC




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