干ばつが加速させる住宅基礎問題——50万戸に迫るリスクの実態
気候変動が揺るがすオランダの住宅市場、修繕費総額は110億ユーロ超
夏の休暇から戻ると、壁に見覚えのないひび割れが入っていた——そんな報告がオランダ各地で相次いでいる。今年の記録的な乾燥は秋の訪れとともに一段落したが、地中に刻まれたダメージはそう簡単には元に戻らない。知識機関Deltaresの地盤沈下専門家オットー・レフェルト氏は、「2018年も非常に乾燥した年で、粘土質地盤の地域では同様の問題が急増した」と指摘する。浅い基礎を持つ住宅が粘土地盤の収縮に追随できず、壁のひびや建具の歪みが生じるのだ。
42万5千戸が「危険水域」、気候変動でさらに拡大
DeltaresとTNOが共同で実施した調査によれば、現時点で基礎に問題を抱える、あるいは近く抱える恐れのある住宅は約42万5千戸に上る。さらに業界団体KCAF(住宅基礎問題対策知識センター)は、気候変動の進行により30年後にはこの数が約68万7千戸まで膨らむと予測している。すでにアーネムなど一部の自治体では住民向けの相談窓口が設けられているが、修繕費は数万ユーロに及ぶケースも珍しくない。金融市場監督局(AFM)の試算では、問題を抱えるすべての住宅を修繕した場合の総費用は110億ユーロ超に達する。このうち約7万5千世帯は住宅ローンの増額などによる自力負担が困難とされており、経済的弱者への影響が特に懸念される。
「住宅パスポート」と政府支援を求める声
問題をさらに複雑にしているのが、情報の不透明さだ。今年4月から住宅売却時の査定報告書に基礎の状態に関する記載が義務付けられたが、現状では立地情報をもとにした「推定」にとどまることが多く、実態を正確に把握できていないケースが大半だという。KCAF代表のフランク・ファン・リール氏は「住宅に関するあらゆる情報を一元管理できる『住宅パスポート』の導入が必要だ」と主張する。同氏は「基礎問題を抱える住宅の30%は、予防的対策で救えるはずだ」と述べ、早期発見と適切なメンテナンスの重要性を強調する。住宅所有者協会(Vereniging Eigen Huis)のシモン・フレイセン氏も「原因にも保険にも手が届かない状況で、所有者に過大なコストを負わせるべきではない」と政府の財政支援を訴える。技術面ではレフェルト氏が、粘土地盤の乾燥を防ぐための覆土や住宅周囲の点滴灌漑、より深い基礎工事といった気候適応型の対策を提案している。
在蘭日本人にとっての影響
賃貸住宅に住む場合でも、基礎の問題は無縁ではない。賃借人は修繕の主体となれず、住宅法人や大家の対応に依存せざるを得ない。住宅購入を検討している場合は、査定報告書の基礎状態の記載内容を慎重に確認することが今まで以上に重要になっている。気候変動による乾燥と豪雨の繰り返しは今後も続く見通しであり、住まい選びの際にはアーネムのような粘土質地盤の多い地域に特に注意が必要だ。「住宅パスポート」制度が実現すれば、外国人居住者にとっても住宅の状態を把握しやすくなる可能性がある。政策論議の行方を注視したい。
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情報源: NOS Algemeen


