オランダ社会の保守化——「解放の先進国」という自己像の揺らぎ
調査が示す伝統的価値観の根強さと新たな保守思想の台頭
「オランダはリベラルな国だ」——そうした自己像を長年にわたって内外に発信してきたこの国で、その前提を揺るがす調査結果が相次いでいる。NU.nlが伝えるところによれば、平等や解放をめぐる価値観において、オランダ社会は「進歩的な最前線」からじわりと後退しつつあり、その変化は単なる一時的な振れ幅ではないとする見方が広がっている。
「先進国」という自己像と調査が示す現実のギャップ
オランダは1960〜70年代以降、女性の権利、性的少数者の権利、薬物政策など多くの分野で欧州内の先駆的な役割を担ってきた。同性婚を世界で初めて法制化したのも、安楽死を法律で認めたのもこの国だ。こうした実績が「オランダ=リベラル」という国際的なイメージを形成し、国民自身もその像を誇りとしてきた面がある。
しかし最近の社会調査は、その自己像と実態のあいだに無視できないギャップが生じていることを指摘している。ジェンダーの役割分担に関する意識、移民・多文化共生への態度、家族のあり方といった領域で、より伝統的・保守的な回答が増加傾向にあるという。
保守思想の台頭——新しい潮流か、潜在していた価値観の表出か
分析者たちが注目するのは、こうした傾向の「二重性」だ。一方では、ポピュリスト政党の伸長や宗教的保守主義の再評価など、ここ数年で顕在化した新たな保守的思想の台頭が変化を牽引しているとされる。2023年の総選挙でヘルト・ウィルダース率いるPVVが第一党に躍り出たことは、その象徴的な出来事として位置づけられる。
もう一方では、こうした変化が「新しい」現象にとどまらない側面もある。研究者らは、オランダ社会にはリベラルな表面の下に、長年にわたって温存されてきた固定的な価値観——とりわけ女性の家庭内役割や移民への潜在的な警戒感——が存在していたと指摘する。いわば、社会の変化が「保守化」というよりも、以前から根付いていた伝統的価値観の「可視化」である側面も否定できないという見解だ。
在蘭日本人社会にとっての意味
日本社会もまた、ジェンダー格差や多様性の受容をめぐって揺れており、オランダの動向はどこか他人事には映らない。「進歩的なオランダ」というイメージを前提に移住・定住を選んだ在蘭日本人にとって、この変化は生活実感とも重なる部分があるかもしれない。職場における平等意識、子育てをめぐる社会的サポート、外国人コミュニティへの受容度——いずれも、価値観の地殻変動と無縁ではない。
オランダが「どんな社会であり続けたいか」を問い直すこの議論は、当面続きそうだ。数字や政策の変化だけでなく、日常の人間関係や職場の空気感にも目を向けながら、現地の動向を注視していく必要がある。
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情報源: NU.nl


