公務員・救急隊員への暴力に禁固刑を原則化――オランダ検察が10月から新方針
警察官が2025年だけで約1万3,000件の被害、議会圧力を受け制度が動いた
オランダ検察庁(OM)は、警察官・救急隊員・公共交通機関職員などへの暴力に対し、10月1日以降に行われた犯罪から無条件の禁固刑を原則として求刑する新方針を発表した。従来認められていた罰金や社会奉仕活動による処理は行わず、すべての容疑者を法廷に出廷させる。年明け以降に警察官や消防士が相次いで襲撃されたことへの社会的批判と、議会からの強い圧力を受けて実現した制度変更だ。
具体的な量刑基準と対象範囲
新方針では、「公衆暴力」「暴行」「重大暴行未遂」の3罪種について固定の求刑基準が設けられた。たとえば、武器を使わず負傷もさせなかった救急隊員への重大暴行未遂であっても、禁固3か月を求刑する。司法大臣のダフィット・ファン・ウェール氏はNOSの取材に対し、「同様の暴行が一般市民に向けられた場合、通常は80時間の社会奉仕が求刑されるにすぎない」と述べており、公的役職者への暴力に対する処罰の厳格化が鮮明に打ち出された形だ。
対象は緊急業務従事者にとどまらない。警備員・スポーツ審判員・教師・裁判官・弁護士・政治家・地方議会職員、さらにジャーナリストへの暴力にも適用される。OMの担当責任者リザン・ヴェステン氏は声明で「この暴力が社会に与える影響は甚大だが、残念ながら減少の兆しが見えない」と危機感を示した。
背景――繰り返される暴力と制度の形骸化
問題の深刻さを示すデータは明確だ。2025年だけで警察官が約1万3,000件の暴力被害を受けており、警察側も量刑強化を求め続けてきた。年明けには一部地域で警察官が意図的におびき寄せられて襲撃されるケースも発生し、議会での議論が一気に加速した。
実は2006年以降、公的役職者への暴力に対しては通常より最大200%重い刑を求刑できる制度が存在していた。しかし司法省の研究機関WODCの調査によれば、この規定が実際に適用されることはほとんどなかった。新方針は、こうした運用上の形骸化を是正し、求刑の出発点を明確化することを狙いとしている。
裁量の余地と今後の課題
一方で、新方針はあくまで「出発点」であり、検察官と裁判官は事案の個別事情に応じて判断を調整する裁量を引き続き持つ。これは重要な留保点だ。社会奉仕活動を全面禁止とする別の提案は昨年、国務院や裁判官から「個別事情を考慮する余地を奪う」として批判を受けており、今回の方針はその点に配慮した設計になっている。
在蘭日本人にとっても、電車・バスの職員や救急・医療スタッフとの接点は日常的にある。公共の場での暴力に対してオランダ社会が一段と厳しい目を向けつつあることは、社会の安全水準を考えるうえで押さえておきたい変化といえる。
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情報源: DutchNews




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