競合他社の訴えが発端:蘭主要紙の肥満治療薬記事に罰金の波紋
報道か広告か——医薬品規制がメディアの自由を脅かす
オランダの主要メディアが、肥満治療薬に関する記事を理由に保健監督機関から相次いで制裁を受けた問題で、新たな事実が浮上した。NRCが弁護士を通じた調査で明らかにしたところによると、この一連の動きは、競合薬メーカーがみずから当局に申し立てを行ったことで始まっていた。
競合他社の”告発”から始まった規制発動
オランダ保健監督機関(IGJ)は今年8月、NRC、テレグラーフ、フォルクスクラント、ADなど複数の大手紙に対し、オゼンピック、ウェゴビー、マウンジャロといった減量薬に関する記事が処方薬の広告を禁じる医薬品法に違反すると認定し、制裁を科した。しかしNRCの弁護士の調査により、IGJが動いた背景には、減量薬「Mysimba」を製造・販売するGoodlife社による執行要請があったことが判明した。
Goodlife社の主な主張の一つは、NRCやフォルクスクラントの記事が「大多数の報道においてMysimbaへの言及が完全に欠落しており」、一方的な内容だというものだ。同社のメディカルディレクター、マールテン・コック氏はNRCの取材に対し、オランダメディアによる肥満治療の報道は「限られた薬だけが繰り返し圧倒的に肯定的に取り上げられており、偏った不完全な情報を提供している」と語っている。
メディアと規制当局、それぞれの立場
オランダの医薬品法は1992年に成立し、処方箋が必要な薬の商業広告を禁じることで公衆衛生を守ることを目的としている。なお、オゼンピックなどのGLP-1作動薬は多くの国で減量目的に使われているが、オランダでは糖尿病治療としてのみ処方が認められている点も、今回の問題の背景にある。
NRC副編集長のルーカス・ブラウワーズ氏は「IGJが記事を自ら発見したのではなく、競合薬を販売する企業に誘導されて調査に至ったことは明白だ。メディアが監督機関を通じて商業的争いに引き込まれていることを、私たちは深刻に憂慮している」と強い懸念を表明した。フォルクスクラントのピーター・クロック編集長も「罰金が維持されれば、医療ジャーナリストが医学的発展について書くことがほぼ不可能になる。IGJが競合企業に利用されてはならない」と語った。
テレビ報道にも圧力、各社は異議申し立てへ
問題はメディアにとどまらない。NHKのオランダ版ともいえるテレビニュース番組「Nieuwsuur」も、Goodlife社からIGJへの調査申し立てと差し止め請求の脅しを受けていたことが明らかになった。同番組がGLP-1ホルモンに関する4回シリーズを放映した際、Goodlife社はリポーターにMysimbaを番組に含めるよう要求。リポーターがこれを拒否した後、放送内で製品販売代理店から接触を受けたと明かすと、同社は法的措置を断念したという。
DPGメディアとメディアハウスはそれぞれ罰金を不服として正式な異議申し立てを行っている。在蘭日本人にとっても、オゼンピックなどの薬をめぐる議論は身近なテーマだ。今回の問題は、医薬品報道の自由と規制の境界線をどこに引くべきかという普遍的な問いを、オランダ社会に改めて突きつけている。
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情報源: DutchNews


