中絶を刑法から医療法へ――オランダで法案提出、可決の行方はVVD次第
野党Proが法案を議会に提出。現行の24週制限は維持しつつ、規制の枠組み移行を目指す
オランダの野党Pro(プロ)のリサ・フリーヘンタールト議員が9月、中絶をオランダ刑法から除外し、医療法の枠組みで規制する法案を議会に提出した。かつて助産師として働いていたフリーヘンタールト議員は、月曜の朝にフェミニスト団体「ドレ・ミナ」の活動家たちに法案を手渡すセレモニーを国会外で行い、「中絶は医療であり、医療が刑法に含まれるべきではない」と強調した。
「合法なのに犯罪」という独特の法体系
オランダでは1980年代から中絶は実質的に合法とされてきたが、その法的構造は独特だ。刑法上は中絶を行うこと自体が犯罪と規定されており、認可を受けた医師がクリニックや病院で妊娠中絶法の定める条件のもとで行う場合にのみ、例外として認められるという二重構造になっている。現行の条件には妊娠24週以内という制限と、女性が「苦境にある」と意思表示することが含まれる。女性本人は訴追の対象とならないが、施術を行う医療従事者は原則として刑事責任を問われ得る立場にある。
今回の法案はこの制限をそのまま維持しつつ、規制の根拠を刑法から医療法へ移すことを目的としている。フリーヘンタールト議員は「慎重に行われなければならないのは当然だが、そのために刑法は必要ない」と述べる。法案支持者は、刑法上の犯罪という位置づけが中絶へのスティグマ(社会的偏見)を強め、制度の柔軟な改定を妨げてきたとも指摘する。なお現行の中絶法は1980年に下院76対74、上院38対37という僅差で可決された経緯があり、2023年には義務的な5日間の待機期間が廃止され、かかりつけ医による中絶薬の処方も認められるなど段階的に緩和が進んでいる。
可決の鍵を握るVVD、憲法明記も視野に
法案が可決されるかどうかは、右派自由党VVDの動向にかかっている。VVDは2023年に行われた同趣旨の法案採決では反対票を投じたが、2025年の選挙マニフェストでは中絶の刑法除外に「積極的に取り組む」と明記した。VVDが賛成に回れば、D66や小規模野党とあわせて僅差での過半数確保が見込める。一方、連立与党のCDAは引き続き反対の立場を崩しておらず、VVDは「法案を読み込み、国家諮問機関(国家評議会)の見解を待つ」とのみコメントしている。
Proはさらに一歩進め、フランスが2024年に行ったように、中絶の権利をオランダ憲法に明記することも目指している。フリーヘンタールト議員は2022年に米連邦最高裁が中絶の権利を覆した事例に触れ、「そうした圧力はヨーロッパやオランダにも存在する」と警鐘を鳴らした。在蘭日本人にとって直接的な制度変更はないものの、医療アクセスや権利保護をめぐるオランダ社会の議論の行方として、今後の国会審議の動向は注目に値する。
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情報源: DutchNews




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