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新聞形式で小説を届けたオランダの出版社Bulkboek、その26年の軌跡
社会 読了 2分

新聞形式で小説を届けたオランダの出版社Bulkboek、その26年の軌跡

1冊1.50ギルダーの破格値で10万人を魅了した異色の出版革命

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本の形といえば、ハードカバー、ペーパーバック、電子書籍——それが世界の常識だ。だがオランダでは半世紀ほど前、「新聞のような本」を真剣に売り出した出版社が存在した。Bulkboekである。創業者テオ・クニッペンベルフは現在80歳。彼が振り返る26年間の歩みは、読書の民主化をめぐる一つの実験として、今もオランダ出版史に刻まれている。

新聞印刷機が生んだ「安価な読書」

きっかけは、クニッペンベルフ自身の学生時代の体験だった。本が好きなのに、買えるほどの余裕がない。その原体験が、のちの事業の核心となる。1960年代末、ユトレヒトのアートフェスティバルで小冊子を販売していた彼は、偶然の出会いを積み重ねながら出版の世界へ踏み込んでいった。作家ハリー・ムーリッシュを路上で口説き落としてエッセイの抜粋掲載権を得ると、それを足がかりにヤン・ウォルケルスら著名なオランダ人作家も巻き込んでいった。

小冊子販売の収益を元手に、彼が購入したのは通常の印刷機ではなく、新聞用の印刷機だった。薄い新聞用紙はコストが安く、それがそのまま販売価格に反映される。妻のパティ・フォールスミットとともに立ち上げたBulkboekの第一弾は、1970年刊行のベルギー人作家ジェフ・ヘーラーツによる『Schroot』。読者は年間10冊のシリーズを定期購読する形で、1冊あたり1.50ギルダー(現在の約4ユーロ相当)という破格の値段で入手できた。

10万人の読者と、国境を越えた展開

Bulkboekは当初から高校生や若い読者を主な対象としており、各号にはインタビューや批評エッセイ、作品理解を助ける解説文も盛り込まれていた。クニッペンベルフ本人の趣味と、入手可能かどうかという実務的な判断によって作品は選ばれたという。「出版の仕組みなど何も知らなかった」と彼は語り、草創期の環境を「とても原始的だった」と振り返る。

しかし事業は着実に拡大した。創業から数年でオランダ・フランデレン地方の作家に限っていたラインナップは、1970年代後半からレフ・トルストイ、パブロ・ネルーダ、アイリス・マードックといった国際的な名前を加えるようになる。展開地域もオランダ国内にとどまらず、ベルギー・ドイツ・フランスへと広がり、オランダ語以外の言語による出版も手がけた。最盛期には10万人以上の定期購読者を抱えるまでに成長した。

時代の変化と、新たな継承

転機は1990年代初頭に訪れる。安価なペーパーバックが市場に普及し始め、Bulkboekの価格優位性は薄れた。出版を取り巻く経済環境が変わるなか、事業の規模は縮小していった。それでも26年間で250作品を世に出したという実績は揺るがない。

昨年、Bulkboekは教育出版社BruutTAALに引き継がれた。クニッペンベルフは現在も一部の業務に関与しており、新体制のもとでは短編小説のシリーズ刊行に取り組んでいる。「最近の学生は集中力が続く時間がずっと短くなっている」と彼は言い、短い物語が若い読者への入り口になりうると考えている。

古書サイトには今もBulkboek版の作品が流通している。トルストイの『少年時代』、セース・ノーテボームの『世界の半分』、ウィレム・フレデリク・ヘルマンスの『指輪』——その多くが2〜3ユーロで手に入る。初版当時の定価より安い価格で、である。新聞形式という奇抜な装いをまとった本たちは、半世紀を経てもひっそりと読者を待ち続けている。

情報源: DutchNews

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