野党Proが中絶を刑法から外す議員立法を提出――憲法明記も視野に
連立内のCDAが反対、VVDの態度が可否を左右する構図
オランダ最大野党プログレシーフ・ネーデルラント(Pro)の下院議員リサ・フリーヘントハルトが、中絶を刑法典から除外し医療関連法規に移管する議員立法を下院に提出した。法案提出と同日、女性解放運動の象徴的団体「ドレ・ミナ(Dolle Mina’s)」が下院前で同趣旨のデモを行うなど、長年くすぶり続けてきた論争が再び政治の表舞台に浮上した。
なぜ今、刑法から外すのか
現行のオランダ法では、中絶手術を行う医師は原則として刑事罰の対象となる。例外が認められるのは、妊娠24週未満であること、女性が緊急事情にあることを示すことなど、複数の条件を満たす場合に限られる。さらに施術は許可を受けた専門クリニックか病院でなければならない。
フリーヘントハルト議員は「中絶は医療行為であり、刑法が介入すべき領域ではない」と主張する。Proの立場は、中絶の可否を最終的に判断するのは刑事裁判官でも医師でもなく女性自身であるべきというものだ。ただし、「既存の安全基準はすべて医療法規の枠内で維持する」と述べており、脱刑事化が規制の撤廃を意味するわけではないと強調している。さらに同党は、脱刑事化が実現した後の次のステップとして、中絶の権利を憲法に明記することも目指す。その根拠として議員はアメリカの状況を引き合いに出し、「ヨーロッパやオランダでも権利を制限しようとする圧力は存在する。憲法への明記は重要な防波堤になる」と語った。
70年代から続く政治的攻防
中絶をめぐるオランダ政界の対立は半世紀に及ぶ。1970〜80年代、自由化を求めるPvdA(労働党)と女性運動に対し、CDAは徹底して制限を主張した。デン・ハーフ内閣期にはCDA法務大臣ファン・アフトがヘームステーデの中絶クリニック閉鎖を画策した際、PvdAの閣僚が女性運動指導者に極秘で知らせ、警察が到着したときには数十人の女性がクリニックを取り囲んでいたという逸話も残る。
最終的に1980年のファン・アフト内閣下で中絶を条件付きで合法化した「妊娠中断法(Wet afbreking zwangerschap)」が、下院76対74、上院38対37という際どい賛否で成立した。賛否が極めて僅差だったことは、この問題の政治的敏感さを今に伝えている。近年は段階的な緩和が進んでおり、数年前に5日間の熟慮期間が廃止され、家庭医による中絶薬の処方も解禁されている。
鍵を握るVVDの動向
今回の法案が成立するには、野党各党に加え与党側の賛票が不可欠だ。VVDは2025年の選挙公約に「中絶の脱刑事化に積極的に取り組む」と明記しており、理論上は賛成に回り得る。しかし連立協定では「医療倫理に関する事項は慎重かつ敬意を持って審議する」と定めており、連立パートナーのCDAは緩和に反対している。VVDは現時点で「法案を読み、国務院の意見を待つ」と述べるにとどまり、明確な態度を示していない。
在蘭日本人の視点から見れば、この議論はオランダの医療・法制度がどのように女性の身体的自律を位置づけるかという根本的な問いに関わる。法案は現在、国務院(Raad van State)の審査に付されており、その意見が今後の議会審議の行方を大きく左右しそうだ。
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情報源: NOS Algemeen




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