「社会の粗暴化」は深刻な問題、でも自分は関係ない——オランダ人の意識調査が示す矛盾
HCSSの調査が浮き彫りにした「他人のせい」という心理
中指を立てる、住宅街で車を猛スピードで走らせる、ゴミ収集所の脇に廃棄物を放置する——。こうした「粗暴な行動(verhuftering)」がオランダ社会にとって脅威になっているとの見方が、広く共有されていることが改めて示された。オランダのシンクタンク「ハーグ戦略研究センター(HCSS)」が実施した調査によると、オランダ人の4分の3が「社会での反社会的な行動は増えている」と感じている。一方で、自分自身がその一因だと認める人はわずか4分の1未満にとどまり、意識と行動の間に大きな乖離があることが明らかになった。
世代によって異なる「粗暴化」の中身
調査を担当したHCSSの研究者ヘルベン・バッカー氏は、粗暴化の問題は単なる不快感にとどまらないと指摘する。「これは、私たちが互いに心地よい社会空間を築けていないという感覚であり、人々がより不安を感じる原因になっている」と同氏は述べる。
注目すべきは、「粗暴化」の捉え方に世代差がある点だ。50歳以上の世代は権威の喪失や多文化主義を問題視する傾向が強く、「他の文化出身の人々がオランダの流儀を理解していない」という視点から粗暴化を語りがちだとバッカー氏は説明する。一方、50歳未満の若い世代はアイデンティティに関わる問題——たとえば他者を劣ったものとして扱う行為——をより深刻に受け止めている。バッカー氏は「若い世代はよりマルチカルチャーな環境で育っているため、捉え方が自然と異なってくる」と分析する。
SNSが「原因」、でも解決策の議論からは消える矛盾
粗暴化の原因として最も多く挙げられたのは、全世代を通じてSNS(ソーシャルメディア)だった。「デジタル社会は、現実の街で何かがおかしくなることの大きな火種と見なされている。オンラインには規範が少なく、道徳的なルールが守られない。一部のオンライン空間では、犯罪行為や救急隊員への暴力が当然のものとして、あるいは賞賛すべきものとして扱われている」とバッカー氏は言う。
しかし興味深いのは、解決策を問われた途端に状況が一変する点だ。責任の矛先は突然、SNS企業から「親・保護者・学校教育」へと向かう。粗暴化の根本原因として指摘したはずのSNSは、解決策の議論からほぼ消えてしまうのだ。自分の行動を棚に上げて他者を批判するこの傾向について、社会文化計画局(SCP)の研究者ヨスイェ・デン・リッダー氏は「自分が何か悪いことをしたとき、人はその理由を知っている。相手が先に何かしたから、と考えることができる。自分の責任を直視することは、人間として難しいのです」と心理的な背景を説明する。
「粗暴化への懸念」自体は新しい現象ではない
20〜40代は65歳以上に比べ、約2倍の割合で「自分も粗暴化に多少は貢献している」と認めているという結果も興味深い。個人主義の進展が、見知らぬ他者への敬意を薄れさせている面もあるとバッカー氏は見る。
一方、デン・リッダー氏は「規範と価値観の崩壊への懸念は、1970〜80年代のSCP報告書にすでに見られ、SNS普及や新型コロナウイルス感染拡大よりずっと前から存在していた」と歴史的な文脈を示す。見知らぬ人への信頼度は安定しているものの、警察官や救急隊員への暴力は増加傾向にあることも確かで、「粗暴化が増えているか減っているかを断言することは難しい」と同氏は慎重な姿勢を崩さない。
在蘭日本人にとっても、公共の場でのマナーや他者への配慮をめぐる議論は身近なテーマだ。この調査が示すのは、「問題は社会にある、でも私のせいではない」という認知のゆがみが、オランダ社会に広く共有されているという現実である。問題解決の第一歩は、まず自らの行動を問い直す意識にあるとも言えるだろう。
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情報源: NRC


