スマホが「スパイ装置」に――監視アプリmSpy、パートナー監視への悪用が横行
子ども向けと称しながら、元交際相手や配偶者の追跡に使われる実態をNRCが調査
元交際相手が、自分の行き先も会う相手も、弁護士との会話の内容さえ知っている――そんな不気味な経験をしたオランダ人女性やアメリカ人女性の証言が、NRCの調査報道で明らかになった。あるドイツの女性は、逃げるために選んだ上海の旅行先にまで元交際相手が現れ、ホテルを2度変えても追跡を逃れられなかったという。「裏切り者は、ずっとポケットの中にあった」。その正体は、スマートフォンに密かにインストールされたスパイウェアだった。
「子ども向け」を隠れ蓑に
問題のアプリは「mSpy」。プラハを拠点とする企業が開発・販売しており、「子どものための最良の電話追跡ツール」と自称している。同社は表向き、未成年の監視にのみ使用するよう警告し、成人を無断で追跡することは「ハッキングかつストーキング」と明示している。しかし現実は異なる。NRCが2024年のデータ漏洩によって入手したカスタマーサービスの記録を分析したところ、パートナーを監視したいと明言するユーザーに対しても、担当者が淡々と技術サポートを提供していたことが確認された。さらにmSpyの広告やブログ記事では、不倫の証拠を掴むためのツールとして堂々と宣伝されているケースもあり、専門家はこの企業が共犯責任を問われる可能性があると指摘する。
2014年から2024年の間に240万人以上がmSpyのカスタマーサービスに接触しており、そのうちオランダ人は少なくとも数百人にのぼる。これはサポートに問い合わせたユーザーだけの数であり、実際の利用者数はさらに多いとみられる。
月100ユーロで手に入る「完全監視」
ベネンダールのサイバーセキュリティ企業DataExpertの専門家がNRCの取材に応じ、実際にAndroid端末へのインストールを実演した。必要なものはクレジットカード、パソコン、そして相手のスマートフォンをわずかな時間だけ手にする機会だけだ。「相手が眠っているか、シャワーを浴びているあいだに、許可なくアプリをダウンロードできる」と専門家は説明する。インストール後はアプリが自動的に痕跡を消去し、画面上に「よくできました!」と表示が出てデジタルの紙吹雪が舞う仕様になっている。
最上位の「extreme」プランは月額100ユーロ強で、GPS追跡、ジオフェンス設定(特定エリアへの出入りをアラートで通知)、カメラとマイクの遠隔操作、Facebook Messenger・WhatsApp・SMSのメッセージ閲覧、さらにすべてのキー入力を記録するキーロガー機能まで備える。監視されているスマートフォン側には何の通知もなく、カメラのランプも点灯しない。
オランダ社会への影響と「フェミサイド」との連鎖
オランダ警察がシステムを照会したところ、2022年以降26件の事案でmSpyが確認され、2024年だけで10件に上った。パートナー暴力支援団体「Filomena」は、ストーカーウェアが「担当ケースの半数以上」に関与していると述べており、「VeiligThuis(家庭内暴力相談窓口)」も同様の実態を認識している。家族法弁護士は「以前は尾行が主流だったが、今はGPSトラッカーやスパイアプリが増えている」と傾向の変化を語る。
深刻なのは、サイバーストーキングが凶悪犯罪の引き金になりうる点だ。今夏、ハーグの裁判所は、スパイウェアを用いて元妻を3年にわたって監視した末に絞殺した39歳の男性に対し、21年の禁固刑を言い渡した。在蘭の日本人を含むすべての居住者にとって、スマートフォンの管理と不審なアプリの確認は、もはや他人事ではない。パートナーや元交際相手との関係に不安を感じる場合は、VeiligThuis(0800-2000)への相談が一つの選択肢となる。
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情報源: NRC


