低所得者16万人が医療費補助の「自治体保険」から取り残される現実
自己負担額引き上げを前に、郵便番号で決まる格差の是正を研究機関が提言
オランダでは低所得者の医療費負担を和らげるため、自治体と保険会社が共同で提供する「自治体ポリス(gemeentepolis)」と呼ばれる特別医療保険制度が存在する。しかし、この制度が十分に機能していないことが明らかになった。公共経済研究所(Instituut voor Publieke Economie)の最新報告によると、全自治体の約4分の1でこの保険が利用できないか、事実上利用が困難な状態にあり、約16万人の低所得者が本来受けられるはずの恩恵を受けられていないという。
自治体ごとに広がる「郵便番号格差」
自治体ポリスは、低所得者が高額な医療費を前に受診を諦めたり、深刻な債務を抱えたりするのを防ぐことを目的とした制度だ。多くの自治体では、生活保護基準の120〜130%以下の収入がある世帯を対象に、自己負担額の免除や歯科・理学療法・眼鏡などの追加補償を提供し、保険料の一部を補助している。現在、約58万人がこの制度を利用している。
ところが、自治体が月々の保険料に上乗せする補助額は地域によって大きく異なる。多くの自治体では月20〜40ユーロの補助を出しているが、53の自治体ではそれを下回り、保険料が対象者にとって高止まりしている。一方、制度そのものを全く提供しない自治体は34にのぼる。同研究所はこの状況を「郵便番号差別(postcodediscriminatie)」と呼び、補助が手厚い自治体では制度の利用率が50%高いというデータを示した。こうした格差が生じた背景には、保険会社の撤退と自治体の財政削減という二つの要因がある。保険会社は採算の取れないポリスから手を引き、自治体も任意の制度であるため削減対象としてきた。制度を全く提供しない自治体の割合は、2017年の1%から現在の10%へと10倍に増加した。
2028年の自己負担引き上げが追い打ちに
問題をさらに深刻にしているのが、カビネット・イェッテンによる医療費削減計画だ。2028年には自己負担額(eigen risico)がさらに60ユーロ引き上げられる予定で、この措置は自治体ポリスによるセーフティネットで緩和されることが前提とされてきた。しかし、そのセーフティネット自体にすでに大きな穴が開いていることが、今回の報告で浮き彫りになった。研究所の調査リーダー、ヤスパー・J・ファン・ダイクは「地域のセーフティネットに穴がある状態で自己負担が上がれば、低所得者はますます追い詰められる」と警告する。自己負担額の増加が受診抑制につながるという「強い示唆」があるとも同氏は述べている。
全国統一制度の創設を提言
研究所が解決策として提言するのは、自治体任せの仕組みから脱却した全国統一制度の導入だ。具体的には、生活保護基準の120〜130%以下の収入がある人を自動的に自己負担から免除し、歯科・理学療法・眼鏡などを含む補足保険への補償も一律で保障するという内容だ。中央政府はすでに所得データを保有しており、免除対象者を保険会社に通知することは技術的に可能だという。また、現行制度では対象者が自ら申請する必要があるが、その手続きを煩雑に感じて利用を断念するケースも少なくない。自動適用によって、制度を知らないまま取り残される人も減らせると研究所は主張する。
在蘭の低所得世帯や、支援業務に関わる日本人にとっても、この制度の今後は無関係ではない。自治体ポリスの有無や補助額は居住する自治体によって異なるため、現時点で自分の住む自治体がどの状況にあるかを確認しておくことが重要だ。2028年の制度改定に向けた政策論議は続いており、今後の動向が注目される。
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情報源: NRC




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