オランダ社会経済審議会、補助金制度廃止と「数十年最大の税制改革」を提言
最高税率56%導入と医療保険料引き下げを柱に、抜本的な再設計へ
オランダの社会経済審議会(SER)が、現行の補助金制度「トースラフ(toeslagen)」の全面廃止を柱とする税制改革案を政府に提出した。NRCの報道によれば、この提言は「数十年で最大の税制改革」と評される規模のものであり、所得税率の見直しから医療保険料の引き下げまで、幅広い制度変更を含んでいる。
トースラフ廃止が意味するもの
トースラフとは、低・中所得世帯を対象に住居費、医療費、育児費などを補填する補助金制度で、数百万人のオランダ市民が利用している。しかし制度の複雑さや申請・返還をめぐる不正問題はかねてから批判の的となってきた。2019年に発覚した税務当局による組織的な不正請求認定問題(トースラフェンアフフェア)はその象徴的な事例であり、数万世帯が不当に補助金の返還を求められた。SERはこうした構造的な問題を抜本的に解消するため、制度そのものを廃止し、税制や保険料の仕組みに組み込む形での再設計を求めている。
所得税率と医療保険料の大幅見直し
改革案の具体的な内容として注目されるのが、所得税率の引き上げだ。高所得者に対しては最大56%の所得税率を適用する方向が示されており、現行の最高税率(49.5%)からの大幅な引き上げとなる。一方で、医療保険料(ゾルフプレミー)は引き下げる方針が示されており、中・低所得層の手取り収入の維持を図る狙いがある。補助金をなくす代わりに、税や保険料の仕組みそのものを通じて再分配を実現しようという設計思想だ。
在蘭日本人への影響と今後の行方
今回の提言はあくまでSERによる勧告であり、実際の法改正には議会の審議と政府の決断が必要となる。ただし、SERは労使双方の代表と独立専門家で構成される影響力ある諮問機関であり、その提言が政策議論の起点となることは多い。在蘭日本人にとっては、住居手当や医療補助といったトースラフの受給資格を持つ場合、制度廃止後の代替措置がどのように設計されるかが最大の関心事となる。改革の実施時期や移行措置の詳細は今後の政府の対応次第だが、オランダの福祉と税制の根幹に関わる議論として、引き続き注視が必要だ。
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