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偽投資サイトで12万ユーロ詐取——オランダで広がる「なりすまし」投資詐欺の実態
社会 読了 3分

偽投資サイトで12万ユーロ詐取——オランダで広がる「なりすまし」投資詐欺の実態

著名政治家の偽広告、巧みな人間関係、そして消えた老後の資金

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ケルクドリール在住のヤクリン・ファン・デル・ハイスさん(74)は、キッチンテーブルの上に分厚いバインダーを広げ、夫ハンスが2020年から2021年にかけて送金した記録を一枚ずつめくっていく。庭では小型の自動芝刈り機が静かに動いている。ハンスさんは2025年4月に亡くなった。老後のために積み上げてきた貯蓄は、ほとんど消えていた。

きっかけは、脳梗塞の療養中にハンスさんがインターネットで目にした広告だった。自由党(PVV)党首ヘールト・ウィルダース氏が暗号資産で大きな利益を得たとする内容で、クリックすると「Fin-Toward」という投資サービスのサイトに誘導された。ウィルダース氏が大の苦手だというヤクリンさんも、「夫にとっては逆に信頼の証に見えたようだった」と振り返る。サイトに氏名と電話番号を入力すると、すぐに英国番号からリチャード・ブルックスと名乗る男が電話をかけてきた。礼儀正しく、流暢な英語を話し、ハンスさんの希望に応じてドイツ語でのメールにも対応した。

巧みな「信頼」の構築と消えた資金

ブルックスは遠隔操作ソフト「AnyDesk」をハンスさんのパソコンに導入させ、ポートフォリオ管理画面を通じて投資が順調に増えているように見せかけた。ロンドンのGlorious Tech社に8000ユーロ、エストニアのBelaston Tradeに1万8000ユーロ、同じくOutStaffに2万1000ユーロ——バインダーには数十件にわたる送金記録が並ぶ。残りはビットコインに換えて送金された。最終的にハンスさんが投じた総額は12万2000ユーロに達した。

画面上の「残高」は24万8509ユーロを示し、引き出しボタン(withdrawal)も存在したが、ブルックスは「SpaceXとのプロジェクト」や「シンガポールの暗号資産案件」を次々と提示して引き出しを先延ばしにした。「全額は保険でカバーされています(Volle Summe ist versichert)」とのメールも届いていた。オランダの金融監督当局AFMが2021年3月にすでにFin-Towardに対する警告を出していたが、ハンスさんはそれを知らなかった。サイトが閉鎖されて初めて、彼は自分が騙されたことを悟った。

国際的な組織犯罪と急増する被害

この詐欺の技術的基盤を提供していたのが、イスラエル・ラマト・ガン拠点のIT企業Airsoftだ。同社はもともと合法的な金融ブローカー向けソフトウェアを開発・販売しており、2017年にはアムステルダムのRAIで開かれた「Financial Partners Expo」にも出展していた。しかしドイツ検察の捜査によると、同社のシステムは犯罪組織に広く悪用され、世界中で数千人の被害者と数億ユーロにのぼる損害を生み出したとされる。同社代表のシェイ・ベンハムウ氏は2026年6月、ドイツ・バンベルクの裁判所で審理を受けた。

オランダ警察に寄せられた同種詐欺の届け出件数は、2021年の392件から2024年には2785件へと急増している。届け出ベースの被害額は2024年で7500万ユーロだが、届け出率の低さや集計の不備を考慮すると、AFMは実際の年間被害額をオランダ国内だけで7億5000万ユーロと推計している。NRCはドイツのDer SpiegelやフランスのMediapartと共同でこの国際詐欺ネットワークの調査報道を実施した。

在蘭の日本人にとっても、こうした詐欺は決して対岸の火事ではない。著名人を使った偽広告、プロフェッショナルな応対、そして「いつでも引き出せる」という安心感の演出——手口はどの言語圏、どの国籍の人物にも通用する。不審な投資案件に接触した際は、AFMの警告リストを確認することが最初の防御線となる。ヤクリンさんは今も週に数回、庭に出て花を育てている。「信頼することが、もう怖い」と彼女は言う。

情報源: NRC

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