オランダ作家の42%、オーディオブックで収入ゼロ——急成長市場の「ブラックボックス」
ストリーミング市場は5000万ユーロ規模なのに、報酬は10セント以下
オランダの著作者連盟(Auteursbond)とLira財団が約700人の作家・翻訳者を対象に実施した調査で、42%が商業ストリーミングプラットフォーム上のオーディオブックから出版社経由で一切報酬を受け取っていないことが明らかになった。報酬を受け取っている作家の間でも「非常に低い金額に自分たちで驚いている」との声が相次いでおり、業界全体に衝撃が走っている。
10セント以下の報酬、それでも「市場は好調」
数字が明確に把握できる国立図書館(KB)のオンライン貸出サービスを見ると、状況はさらに具体的だ。回答者の26%が1冊あたり10セント未満しか受け取っておらず、24%は10〜25セントにとどまる。商業プラットフォームの場合、多くの作家は「ストリーミング全体」としてまとめられた概算額しか受け取らず、どのサービスからいくら得たのかを把握することさえできない状態にある。
こうした低報酬が問題視される背景には、市場の急成長がある。電子書籍・オーディオブックのストリーミング市場はオランダ国内で昨年比3分の1増という高成長を記録し、市場規模は約5000万ユーロに達している。パイは確実に拡大しているにもかかわらず、その恩恵が作家に届いていないという構図だ。
「ブラックボックス」批判と業界の反応
今回の調査が注目を集めるきっかけとなったのは、作家・詩人のLieke Marsman(その後死去)が、自身のオーディオブックがルイステルプラットフォーム「Fluister」で2025年最優秀作品賞を受賞したことで報酬額が明らかになった一件だ。1冊あたり8.5セント強という金額が判明すると、Marsman本人と著作者連盟は強く反発した。
Fluisterを傘下に持つDPGは「出版社への報酬は市場水準に合致している」とする一方、算定方法の公開を拒否。Kobo+もNOSの取材に対して「料金や収入については何も明かしたくない」と回答している。出版社業界団体のMartijn Davidは、ストリーミングサービスの仕組みが書店販売とは根本的に異なると説明する。「書店で売れた本なら作家は約2ユーロの固定収入を得られるが、ストリーミングでは視聴時間などに応じた変動制になる」と述べ、モデル契約では作家への配分が**純収益の25%**と定められていることを明かした。ただし、プラットフォームが最終的な支払い額をどう算出しているかは「我々も疑問を持っている」と認めた。
在蘭日本人クリエイターへの示唆
ベストセラー作家のLex Paleauxは「利益の大部分はStorytel、Spotify、Bookbeatといった大手プラットフォームに流れている」と見る。一方で、「オーディオブックは普段本を手に取らない人に作品を届ける広告塔でもある」とプラットフォームの存在価値を認めつつ、「契約書にはオーディオブックに関する条件が明記されている。報酬が低いなら修正を求めるか、署名しなければいい」と作家側の主体的な対応も求めた。
著作者連盟は出版社に対し、ストリーミングサービスとの契約内容の透明化を強く求めている。オランダで活動するクリエイターや、翻訳・出版に関わる日本人関係者にとっても、デジタルコンテンツの権利と収益配分をめぐるこの問題は、他人事ではないだろう。
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情報源: NOS Algemeen


