情報機関の新権限拡大、「法の支配を脅かす」と監視機関が異例の警告
AIVD・MIVDへの包括的監視権付与に、元幹部も「前例のない批判」と評す
オランダの情報機関を監視する独立機関CTIVDが、国防相マルヨレイン・イェシルギョズの提案する新たなスパイ権限拡大計画に対して、異例ともいえる強さで警告を発している。計画が実現すれば、国内・軍事情報機関であるAIVDとMIVDは、より広範かつ少ない事前承認で市民を監視できるようになる。ロシアや中国といった国家主体、あるいはオランダのインフラへサイバー攻撃を仕掛ける非国家主体への対抗を名目に掲げているが、法の専門家や元情報機関関係者からは深刻な懸念の声が相次いでいる。
「個別審査」が消える——組織単位の監視指定とは
現行制度のもとでは、AIVDとMIVDが特定の個人を追跡・情報収集するためには、3ヶ月ごとに許可を取得しなければならない。この手続きが監視権の乱用を防ぐ重要な歯止めとなってきた。しかし新法案では、機関が特定の組織全体を「敵」として指定することが可能になる。さらに、その組織と何らかの形で協力関係にある団体——たとえば大学——も、連鎖的に調査対象となりうる。
CTIVDのフゴ・ヒレナール委員長はオランダの放送局NOSに対し、「ある大学が敵対組織と指定された団体と協力している場合、その大学の職員を調査することが本当に必要かどうかを、個別に判断しなくてもよくなる」と説明した。個人の行動や関与度にかかわらず、所属だけで監視対象になりうるという仕組みは、無実の市民を広範なリスクにさらしかねない。
大量データとAI活用——「オディドハック」のデータも対象に
もう一つの焦点が、法案が「バルクデータセット」と呼ぶ大規模な個人情報の塊への対応だ。情報機関はこうしたデータを、海底インターネットケーブルの傍受や、ハッカーが盗み出して売りに出したデータの購入によって入手できる。新法案では、情報機関のスタッフが閲覧を許可される前の段階で、AIをバルクデータに適用することも認められる予定だ。
ヒレナール委員長は「国の健康診断プログラムのデータや、オディドハックで流出したデータを想像してほしい」と述べた。「そこにはスパイ活動やテロとまったく無関係な多くの人々の情報が含まれている。そうしたデータが無制限に捜査に使われたり、外国の情報機関と共有されたりすることを、望むべきではない」と強調する。
元AIVD幹部も「前例がない」と危機感
こうした動きに対して、元AIVD職員で監督官も務めたベルト・フウベルト氏は「監視機関がこれほど強く批判するのは前例がない。人権への懸念は十分に理解できる」と述べており、今回の議論が通常の政策論争の域を超えていることを示唆している。
在蘭日本人を含む外国籍居住者にとっても、この問題は無縁ではない。海外との研究協力や国際的なビジネス取引が多い環境では、関与する組織の性格次第で、知らないうちに調査対象の「周辺」に位置づけられる可能性も否定できない。法案の行方は今後の議会審議に委ねられているが、監視機関と政府の間の緊張は、オランダにおけるプライバシーと安全保障のバランスをめぐる重要な岐路を示している。
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情報源: DutchNews




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