動物実験ゼロ社会へ「システム転換が必要」――オランダ諮問委が提言
エネルギー転換に匹敵する変革を、と国家委員会が政府に勧告
オランダの国家動物実験政策諮問委員会(NCad)は、動物実験の完全廃止に向けた工程表をまとめた報告書を公表した。宛先はシルフィオ・エルケンス国務長官(農業・漁業・食料・自然担当、VVD)だ。委員会はその提言の核心を、再生可能エネルギーへの移行になぞらえた「システム転換」という言葉で表現している。技術革新だけでは足りない――そうした認識のもと、政策・規制・産業が一体となって動く仕組みの構築を求めている。
技術は進む、しかし「ノルム化」がカギ
委員長でエラスムスMCの教授でもあるニコ・ファン・メーテレンは「良いことは常にさらに良くなれる」と述べ、過去10年間の進歩を一定に評価した。チップ上で人体組織を培養し、医薬品の試験に使う「organ-on-a-chip」はその代表例だ。ライデンのMimetasなどが実用化を進めているこの技術は、従来の動物実験を部分的に置き換える可能性を秘める。しかし委員会は、こうした革新が研究現場の「当たり前」になるには、規制当局による技術の検証が不可欠だと指摘する。規制上の承認がなければ投資家は資金を出さず、大量生産体制も整わない。委員会はASMLが半導体製造装置で果たしたような役割を担う生産拠点が、できればオランダ国内に必要だとも示唆している。
「デルタ委員」に倣った独立機関を
委員会がとりわけ強調するのが、変革を束ねる独立機関の必要性だ。ファン・メーテレンが参照するのは「デルタ委員(deltacommissaris)」という存在――オランダの水管理と国土防護を長年にわたって調整してきた国家レベルの役職だ。「文字通りのデルタ委員を求めるのではなく、社会・研究者・投資家・EUに受け入れられる明確な権限を持つ組織が必要だ」と彼は語る。その機能は促進・調整にとどまらず、場合によっては制裁を与える権限も持つべきだとしている。
また委員会は、研究者が動物実験を実施した場合、そのデータを共有データベースへ登録することを義務化するよう求めた。サンフランシスコやバングラデシュの研究機関も含め、世界中の研究者が同様の実験を重複して行わずに済む仕組みを整えるためだという。さらに近年の動物行動・感情研究の進展を踏まえ、動物実験の損益分析(スハーデ・バーテン分析)の枠組み自体を刷新するよう提言している。一部の動物実験は医薬品研究への貢献が限定的であることが判明しており、「30年前に想定していたより便益が小さいケースがある」とも指摘した。
在蘭日本人の研究者や製薬関連企業にとっても、この動きは無関係ではない。オランダが動物実験代替技術の規制整備とデータ共有制度で先行すれば、欧州全体の研究標準に影響する可能性がある。国際共同研究や薬事申請の手続きにも波及しうる議論として、今後の政府の対応が注目される。
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情報源: NRC




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