資産課税「ボックス3」改革、2029年以降に再延期――迷走続くオランダ税制
最高裁違憲判決から5年、暫定制度が国庫に年20億ユーロの損失
オランダ政府が長年の懸案としてきた資産課税制度「ボックス3」の抜本改革が、また一年先送りされることになりそうだ。週末に合意された予算案の枠組みを受け、財務副大臣エーレンベルフは改革法案を上院から取り下げる方針を固めた。これにより、当初2028年を目標としていた新制度の導入は、2029年以降にずれ込む公算が大きい。
違憲判決から始まった迷走
問題の発端は2021年にさかのぼる。オランダ最高裁はこの年、ボックス3制度——預貯金や投資といった資産の実際の運用実績ではなく、政府が定めた「みなし利率」に基づいて課税する仕組み——が欧州人権条約に違反すると判断した。旧制度では、基礎控除を超える全資産に一律の想定利回りが適用されており、高リスク投資か低利の定期預金かを問わず同じ税率が課されていた。さらに市場全体が下落して損失が出た場合でも課税が続くという不公平な構造が問題視された。
判決を受けた政府は暫定措置として、預貯金・投資・負債のカテゴリーごとに異なるみなし利率を設定し、毎年市場動向に合わせて見直す方式を導入。また、実際の運用益がみなし利率を下回る場合は還付請求ができる救済策も設けた。ただしこの「いいとこ取り」の設計が財政を直撃しており、国庫への損失は年間約20億ユーロに上ると試算されている。
与野党の溝、埋まらぬまま
政府が準備してきた新制度の柱は、納税者が毎年の所得税申告書に全資産の明細を記入し、実際の運用益に課税するというものだ。理論上は公平だが、申告手続きの煩雑さが増すとして批判を受けてきた。一方、右派野党が求めるのはキャピタルゲイン課税、すなわち資産を売却した際の利益にのみ課税する方式だ。両者の主張は大きく隔たっており、法案審議は膠着状態に陥っている。
オランダに在住する日本人にとって、この問題は決して対岸の火事ではない。国内に預貯金や投資口座を持つ場合、ボックス3の対象となる可能性があり、制度変更の行方は毎年の確定申告に直接影響する。改革の着地点が見えないまま暫定制度が続く現状では、税負担の見通しが立てにくい状況が少なくとも2029年まで続くことになる。制度の動向を注視しながら、税務アドバイザーへの相談など早めの備えが求められる。
広告掲載にご興味のある方は こちら
情報源: DutchNews




/s3/static.nrc.nl/wp-content/uploads/2026/10/23144459/261026VER_2037742375_burg.jpg)
/s3/static.nrc.nl/wp-content/uploads/2026/10/22153851/261026ECO_2037214989_overlast2.jpg)