85,000ギルダーで買えた家が今や150万ユーロ——ある老夫婦の「あの時買っていれば」
アムステルダムの住宅高騰が映し出す、半世紀前の決断の重み
アムステルダム南部に暮らすアンヤさん(79歳)とヤンさん(80歳)夫婦には、今も頭を離れない「もしも」がある。1970年代半ば、ふたりは当時住んでいた賃貸住宅を買い取る機会を与えられた。しかし、その申し出を断った。隣人は同じ条件で購入を決断し、数十年後にそのアパートを100万ユーロ超で売却した。そして現在、問題の物件の市場価値は150万ユーロにまで膨らんでいる。
「あの時は必要ないと思った」
詳細な購入価格として記録に残るのは85,000ギルダー——現在のユーロ換算でおよそ3万8,000ユーロに相当する金額だ。当時のアムステルダムでは、賃貸住宅の払い下げが各地で進んでおり、住人に優先購入権が与えられるケースは珍しくなかった。夫婦にとってその価格が高すぎたわけではなく、「所有する必要性を感じなかった」という判断だったとされる。オランダ紙ADの取材に対し、夫婦はその決断を振り返り、率直に後悔を認めた。
隣人の判断はまったく逆だった。同じ物件、同じ条件、同じタイミング——それでも結果は大きく分かれた。隣人が後年売却した際の売値は100万ユーロを超えており、購入時からの値上がり幅は凄まじい。アンヤさんとヤンさんはその後も同じ住居に住み続けているとみられるが、「資産」としての恩恵を受ける機会は永遠に失われた。
アムステルダム住宅市場、半世紀の変貌
この夫婦の話は、オランダ最大級の一般紙ADが連載する「金銭的失敗談(geldflater)」シリーズの一篇として紹介されたものだ。同シリーズは、大小さまざまな財務上の判断ミスを当事者が率直に語る企画で、読者の共感を集めている。
アムステルダムの不動産価格がこの半世紀でいかに変化したかは、この事例が雄弁に物語る。1970年代には庶民が手の届く範囲にあった住宅が、今や富裕層や投資家でなければ購入困難な資産へと変貌した。オランダ全体でも住宅不足と価格高騰は深刻な社会問題となっており、政府は供給拡大策や投資目的の購入規制などを相次いで打ち出しているが、都市部の価格水準は依然として高止まりしている。
在蘭日本人にとっての示唆
オランダに暮らす日本人にとっても、住宅の「買う・借りる」という選択は切実なテーマだ。アムステルダムやその周辺では賃料も購入価格も高騰が続いており、永住や長期滞在を視野に入れる人にとって、不動産購入の検討は避けて通れない課題になりつつある。アンヤさんとヤンさんの物語は、特定の時代の特殊事例ではなく、「決断の先送り」がいかに大きなコストを生むかを示す普遍的な教訓として読むこともできるだろう。
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情報源: AD

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