生垣越しに聞こえた少女たちの願い事
NRC読者コラム「Ikje」より――小さな会話が宿す、大きな問い
生垣というのは、不思議な装置だ。道行く人を遮るようでいて、言葉だけはするりと通してしまう。NRCの読者投稿コラム「Ikje」に寄せられたある小さなエピソードは、そんな生垣の性質から生まれた、ほんの数行の物語である。
聞こえてきた、ひとつの願い
投稿者によれば、自宅の生垣の向こうからは、自分の存在に気づかない通行人たちの会話がよく聞こえてくるという。ある日、耳に飛び込んできたのは二人の幼い少女の声だった。一人が「願い事をしていいよ」と言われ、迷わずこう答えた。「二度と戦争がないように」と。
その言葉は、まっすぐで、重い。世界のどこかで続く紛争のニュースが日常に溶け込んでしまった時代に、子どもがとっさに選んだ願いが「平和」だったという事実は、それだけで胸を打つ。
もう一人の少女が返した言葉
しかし話はそこで終わらない。もう一人の少女が間髪入れずに返した。「ううん、それよりも無限にたくさんの願い事を願うべきだよ」と。
一見すると、友人の崇高な願いを横取りするような言葉に聞こえるかもしれない。だがよく考えると、これは子どもならではの純粋な論理だ。無限の願い事があれば、平和も、健康も、ほかのあらゆる善いものも、すべて手に入れられる。欲張りではなく、むしろ徹底的に合理的な発想である。大人が「一つだけ選ぶとしたら」という前提を疑わずに受け入れるところを、この少女はあっさりと飛び越えてみせた。
120字の宇宙、読者が綴る日常
「Ikje」はNRCが設ける読者参加型のコラム欄で、120字以内の個人的な体験や逸話を毎回掲載している。投稿はメールで随時受け付けており、プロの書き手でなくとも、日常のひとこまが洗練された読み物として誌面に載る。このエピソードもその一つだ。
オランダで暮らしていると、こうした何気ない路上の会話や近所のやりとりが、思いがけず深いものを含んでいることがある。生垣一枚隔てた向こう側に広がる、他者の言葉の世界。それは盗み聞きというより、都市や住宅地に静かに息づく人間のドラマへの、小さな窓なのかもしれない。
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情報源: NRC



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